EY大手会計事務所のベトナム事情 No.044

VASに基づく
売上計上タイミング

EYベトナムの小野瀬です。第44回の対談は、日系企業担当の西川貴陽ディレクターです。

小野瀬 国際財務報告基準(IFRS)で第15号「顧客との契約から生じる収益」が発効され、日本でも収益認識に関する会計基準及びその適用指針が発効されていることから、最近はベトナムでも収益認識基準が話題にあがることが多いかと思います。現地の会計基準・税務では、どのタイミングで売上が計上されるのでしょうか。

西川 ベトナムでは、ベトナム会計基準(Vietnam Accounting Standard/VAS)が採用されています。VAS第14号「売上及びその他の利益」において、リスクと経済価値の大部分と支配が買手に移転し、かつ信頼性をもって収益を測定できる等の要件を満たした場合に、収益を認識するとされています。

ベトナム税務での
売上計上タイミング

小野瀬 この点は、これまでの日本の会計基準と概ね同等となりますね。それでは税務上の売上認識は、どのタイミングになりますか。

守山 税務上の売上は通達(Circular)96/2015の3項において、物品に対する所有権もしくは使用権が買手に移転した時点で認識するとされています。

ただし輸出売上に関しては、通達119/2014の3項7号に従い、輸出通関申告が完了した時点で売上を計上することになります。この点については2020年5月7日付のオフィシャルレター5476/BTC-CSTにて同様の内容が確認されています。

貿易条件がFOB(本船渡し条件)やCIF(運賃保険料込条件)となっている場合、ベトナム会計上では、船積時点で収益認識をするケースが多いかと思います。その場合には、税務上の収益認識時点よりも遅れることとなります。

小野瀬 税務上の輸出売上計上のタイミングは、会計よりも早くなるケースが多いのですね。

輸出通関から船積みまでの期間が長い場合で、輸出売上に関して税務リスクを減らしたいときには、法人税申告書上、収益認識時点のズレについて加算調整するなどの対応が必要となりそうですね。

小野瀬 貴久 Onose Takahisa
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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