残業時間の上限 200時間から300時間へ

国会常務委員会は2022年3月23日、労働者の残業時間の上限引き上げを決議しました(決議17/2022/UBTVQH15)。1年間の残業時間の上限が現行の200時間から300時間に引き上げられ、2022年1月1日から適用されます。また、1ヶ月の上限は、現行の40時間から60時間に引き上げられ、2022年4月1日より適用されます。

コロナの影響による労働力不足に対応するため、各国商工会議所などから残業時間上限の引き上げの要望があがっていました。

上限の引き上げによる法人税への影響

税務総局発行の2015年6月15日付オフィシャルレター(以下OL)2323/TCT-CSや2010年1月18日付OL166/TCT-CSによると、残業時間の上限超過分に対する残業手当については、法令に遵守していないものとして法人税計算上、損金不算入となります。

従前は労働法に従い、縫製業などの特定の業種のみ労働局へ残業時間の延長申請を行えば300時間まで延長できていましたが、業種問わず、上限が引き上げられます。

なお、今回の決議17号においても、年間上限の引き上げにあたっては、労働法107条4項の定める労働局への延長申請が必要です。超過残業に対する残業手当は税務調査でもよく指摘される点であり、残業時間の延長申請漏れも散見されるため、残業時間の管理と税務上の加算調整には留意が必要です。

西川 貴陽 Nishikawa Takaaki
公認会計士(日本・米国)、日系企業担当インドシナ副統括ディレクター。EY新日本有限責任監査法人にて、監査業務や株式公開支援業務、財務デューデリジェンス業務に従事後、2016年よりEYベトナムに赴任。
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