前回まで、非生産的なファスト(Fast)思考について、①「勝手な決定:最初に答えありき」、②「勝手な決定:レッテル貼り」、③「ネガティブの増幅:永遠の不幸」をご紹介してきました。

今回は、④「ネガティブの増幅:一事が万事」と⑤「ネガティブの増幅:負の拡大予言」について、ご紹介します。

④ネガティブの増幅
「一事が万事」

他者(自分)の価値観やモチベーション、能力について、1つの状況で判断したことが、ほかのすべてに通じると考えてしまうことです。

「彼は会議中に腕を組んで偉そうだ。横柄で失礼な人に違いない」「仕事でミスをした。私はこの仕事に向いていないし、この会社では通用しないのではないか」

このように1つの事象から、他のすべてに対しても同じように考えてしまう思考スタイルです。

仕事でうまくいかないことがあると、こっちもうまくいかないんじゃないかと考えてしまう事はありますよね。でも、そこに論理的なつながりはないことが多いのです。

⑤ネガティブの増幅
「負の拡大予言」

その状況のネガティブな影響を、大げさに捉えてしまうことです。雪だるまのように、ネガティブが大きくなっていくイメージです。例を見てみましょう。

「昨日、遅刻を注意した部下が、今朝来ていない。連絡も取れない。まさか、このまま退職するのか。私の指導が悪かったのか、私は管理職に向いていないのではないか…」

「信頼する先輩が、他社に転職してしまった。これで2人目だ。会社から優秀な人がどんどんいなくなる。わが社の未来は真っ暗だ」

人間の脳は、人類の進化の中で、ポジティブなことよりもネガティブなことを鮮明に記憶し、忘れないという性質を備えてきました。これは人類が生き残るための重要な危機管理能力の1つですね。

「あの茂みからライオンが出てきた。また出てくるかもしれないぞ。ああいう場所には要注意だ」と。この能力があったからこそ人類は生き残れたわけですが、言い換えればネガティブな要素をもつ人間だけが生き残れたということです。

我々、経営管理者は「人間とはそういう生き物」だと認識したうえで、日々のマネジメントを考えていかなければならないのですね。

知識 大輔 Chishiki Daisuke
日本で営業責任者を務めた後、BConChinaで5年間、董事長総経理を経験。2020年8月から董事長兼BConベトナムゼネラルダイレクター就任。
Business Consultants Vietnam Co., Ltd.
電:(024) 6658 6653
E-mail:d-chishiki@bcon.co.jp