写真・文/杉田憲昭(GRAFICA)

日本品質で人々の生活に貢献
ベトナムに愛される物流企業へ

四半世紀以上にわたり、多くの日系ベトナム進出企業へ物流サービスを提供してきた「鴻池ビナトランスロジスティクス」。コロナ禍の今も変わらず、人々の生活や企業活動の基盤を支える川瀬康一氏に、現在の取り組みと描く未来を尋ねた。

物流から工場請負まで、
多彩なサービスを提供

――御社の進出の経緯と沿革を教えてください。

川瀬 鴻池運輸は、環太平洋地域拠点ネットワーク拡充の一環としてベトナムに着目。1993年に日系物流会社としては早い段階でベトナムに進出、ホーチミン市事務所を開設しました。その後、ベトナム大手物流会社の「ビナトランスグループ」と合併し、1996年に定温物流をはじめとする総合物流企業「鴻池ビナトランスロジスティクス」を設立。現在は航空貨物取扱事業の「ビナコフォワーディング」と、冷凍・冷蔵倉庫事業の「アンファ-AG」の3法人体制で、輸出入から国内物流まで幅広いサービスを提供しています。
 
拠点は本社があるホーチミン市のほか、バリア・ヴンタウ、ダナン、ハノイ、ハイズオン、ハイフォンなど。冷凍・冷蔵倉庫や国内物流倉庫、保税倉庫やトラック拠点、通関事務所も多数運営し、全国に展開しています。
 
取扱品は海産物や冷凍食品を中心とした食料品から、鉄鋼や鉄製構造物などの重厚長大商品、工業団地向けの材料や製品まで、幅広く手がけています。

作業前に朝礼を行うことで、業務連絡や安全確認の周知と共に社員間のコミュニケーションを促進

 

――御社の強みや、注力している推進中の事業を教えてください。

川瀬 主軸となるのは進出当初から続く、日系進出企業向けの物流サービスやサポートです。冷凍・冷蔵貨物のほか、工業団地の企業に向けた機械設備の輸入や搬入、据付、原料の輸入や製品輸出も行っています。
 
近年は国内輸送に力を入れており、自社車両を積極的に導入。南北間の幹線輸送や都市部の配送など、トラック輸送サービスの充実を図っています。特に冷凍・冷蔵輸送は得意とする分野で、ベトナムの食を支えるサービスを日本品質で提供することで、「食料品輸送は鴻池ビナ」と言われる存在になれたと自負しています。
 
一方、荷主企業内の様々な工程の物流業務を請け負う3PL(サードパーティーロジスティクス)サービスも提供しています。入出荷や在庫管理など製造工程で発生する作業を当社が行い、お客様にはコア事業へ専念いただく。そのためにあらゆる分野に対応できるマルチタスク人材の育成を進めており、お客様の業務の無駄を省くことで、生産効率や品質の向上、コストダウンを提案しています。

冷蔵・冷凍設備を備えた自社車両で、徹底した温度管理と衛生レベルを実現

「止めない」事が使命
南北輸送の配送網を拡充

――コロナ禍での影響や、新たな取り組みはありますか?

川瀬 社会的隔離の影響から、飲食や小売業の休業、工場の減産などが相次ぎ、昨今は輸送貨物の量自体が大幅に減っています。しかし、弊社の主要商品である生鮮・冷蔵・冷凍食品の流通はソーシャルワークであり、決して止めることができません。そこで、倉庫など現場で働く従業員が拠点で寝泊まりしたり、配送ドライバーの人員を削減したりと、法令を遵守しながら事業を継続しています。
 
しかし、困難の中だからこそ、ベトナム人社員と日本人社員が1つになり成長できる部分もあります。その1つが「カタリバ」活動です。会社の歴史や自社の企業理念を学び、従業員同士が語り合う。そうすることで会社を深く知り、好きになってもらえればと思っています。また、スタッフの発案を受けてフェイスブックの社内向け公式アカウントを開設しました。全国の社員が気持ちや目標などを共有できる場で、会社全体に横串を通すことで、より強い結束を目指しています。
 
宣伝活動も積極的に取り組む予定です。ベトナムでの認知度を高め、良いイメージを持っていただく。従業員に自信を持って仕事に取り組んでもらうためのブランディング活動です。
 
コロナ禍の現在は厳しい試練の時ではありますが、「物流を止めない」ことは、当社の社会的使命。食料品の物流は命を守るために不可欠なため、全社一丸となって安全品質最優先で業務に取り組んでいます。

――今後の展望を教えてください。

幹線トレーラー、市内トラックの新拠点ハイズオン支店。保税倉庫を有し、通関業務も行う

川瀬 当社は5年後に設立30周年を迎えます。そこで第2の創業として更なる飛躍を目指し、核となる日系進出企業へのサービスと国内輸送、この2つの幹をより太くしたいと思っています。
 
特に各地域へシームレスな輸送を提供する南北輸送は、「鴻池ビナエクスプレス/KONOIKE VINA EXPRESS」として商標登録しました。中国(華南・華東地域)やラオスとのクロスボーダー連携も進めており、各国からの貨物をハノイで通関・荷捌きし、ベトナム全土の配送網に繋げるなど、ベトナム事業の背骨として育てていきたいと思っています。同時に、南北輸送から連結される市内配送も各地に拠点を拡充し、よりベトナムの人々の生活向上に貢献したいと考えています。
 
経済成長を続けるベトナムは、東南アジアで最も有望な国のひとつ。その中で、創業140年を迎えたKONOIKEグループのノウハウ・信頼と、「期待を超えなければ、仕事ではない」というブランドプロミスに基づいた高い品質と安全なサービスを、当社は「KONOIKEブランド」として、引き続き提供していきます。
 
また今後は、日系企業はもとより、各国の外資企業や地場ベトナム企業の皆さまにもご利用いただきたい。世界的なサプライチェーンの広がりに合わせたグローバルフォワーダーとして、愛される企業に成長していきたいと願っています。

 

COMPANY INFO
1993年に駐在員事務所開設。「ビナトランスグループ」と1996年に合弁し、「鴻池ビナトランスロジスティクス」を設立。食料品から重厚長大輸送まで幅広い物流サービスを提供。商品登録された「鴻池ビナエクスプレス」を旗印に、ベトナム全土での事業を展開している。
General Director 代表取締役 川瀬 康一
KOICHI KAWASE
1970年生まれ。1992年に鴻池運輸株式会社に入社。日本国内、海外の工場設備移設やODAなど重厚長大輸送を中心に担当。2021年4月から現職。