EY大手会計事務所のベトナム事情 No.048

月次の残業時間が
緩和される可能性

EYベトナムの小野瀬です。第48回の対談は、日系企業担当の外山隆太郎マネジャーです。

小野瀬 2021年9月9日付の決議105/NQ-CPにて、新型コロナウィルス影響下の残業時間延長の提案がされていますね。残業時間は各企業とても関心が高いと思いますので、こちらについて教えてください。

外山 まずベトナムでは労働法により、下記の通り残業時間に上限が設定されています。
➀残業時間が1日における通常労働時間の50%を超えない。
②残業時間が1ヶ月あたりで40時間を超えない。
③残業時間が1年あたり200時間を超えない。
 
一方、労働法に規定する一定の産業分野、業種、業務に該当する場合は、年間300時間までの残業時間の延長が認められます。法定で定められた残業時間を超えた場合、税務調査で超過部分の費用は法令違反として法人税法上損金不算入とみなされるリスクもあるので、残業時間を把握・管理することが重要です。
 
今回の決議105号では、社会的隔離などにより打撃を受けた企業の早期回復を手助けするために、②の月次残業時間の上限緩和が提案されています。従業員との合意に基づき、年間300時間を超えない範囲で月次残業時間の延長を認める提案内容になっています。

年間の残業時間に
変更はない?

小野瀬 企業の早期回復を促すために、月次の残業時間の緩和が提案されているということですね。
 
現法では一定の企業のみ年間300時間までの残業が認められていたと思いますが、年間については議論されていますか。

外山 先ほど一定の産業分野、業種、業務に該当する場合は、300時間までの残業時間の延長が認められるとお話しましたが、この決議の趣旨は社会的隔離により打撃を受けた企業を早期回復させることが目的となりますので、該当しない企業についても300時間まで延長することを認める議論が進んでいます。ただ、現時点では正式なガイダンスが出るまで、適用対象は不明確です。

小野瀬 なるほど。正式なガイダンスが出て、200時間を超えることが認められなかった企業も延長できると良いですね。

小野瀬 貴久 Onose Takahisa
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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