EY大手会計事務所のベトナム事情 No.047

APAの
適用ガイドライン

EYベトナムの小野瀬です。第47回の対談は、日系企業担当の浅野智道ディレクターです。

小野瀬 近年のベトナムにおける税務調査の傾向として、移転価格による多額の追徴を受けたケースも少なくありません。
 
移転価格リスクを軽減する1つの方法として、世界的には事前確認制度(APA)がありますが、ベトナムの状況を教えてください。

浅野 APAは税務当局と納税者との間で、特定期間の関連者間取引に関する独立企業間価格や移転価格算定方法の妥当性について、事前の確認を受け、合意を得る制度です。事前の確認において合意された事項を遵守している限り、移転価格課税を回避できるため、納税者にとって大きなメリットがあります。
 
これまでにベトナムでAPAが承認された事例はありませんが、2021
年8月3日から、APAの適用に関するガイドラインである通達号45/2021/TT︲BTCが発効されています。

APA適用の
申請プロセス

小野瀬 APAが上手く機能すれば、納税者と税務当局双方にとって、移転価格に関するリスクや議論を事前に解消できるため、新たに適用されたガイドラインによりAPAの有効性が高まっていくことが期待されますね。

浅野 APAを適用する際は、事業運営や取引の実態が独立企業間原則に則している必要があります。
 
申請にあたっては、納税者は所定のフォームによりAPA申請書と関連書類をベトナム税務総局(GDT)に提出することが求められます。
 
従前は、正式な申請書の提出に先立ち、GDTとの事前協議が義務付けられていましたが、今後は必須ではなくなりました。
 
提出後、当該申請書の評価、協議および交渉が行われ、結論が下されます。なお、これらのステップについて、明確なタイムラインは定められていません。また、APAの有効期限は最長3年(従来は5年)に短縮されています。

小野瀬 レギュレーションの変更や実際のAPA適用状況を勘案し、APAの適用に向けた戦略や計画を検討する必要がありますね。

小野瀬 貴久 Onose Takahisa
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
Ernst & Young Vietnam HCMC Office
電:(028) 3824 5252
E-mail: eyhcmc@vn.ey.com
ウェブサイト: www.ey.com