国内と東南アジアで成長
売上は5年で10倍以上に Vol.33
KING JIM (VIETNAM) CO., LTD.
2007年にベトナムに進出したキングジムベトナム。南部ビンズン省に3つの工場を持ち、近年では国内外の販売にも注力して事業を拡大させてきた。その経緯と工夫を、海外営業推進を担う上原子氏が語る。
低価格・高品質商品を
―― 御社は2007年にベトナムに設立されました。
上原子 キングジムは1996年にPPファイルの工場をインドネシアに、1998年には綴じ具の工場をマレーシアに竣工しました。
今回の目的は法人向けの主力商品であり、1964年の発売以来累計5億冊以上を出荷している厚型ファイル「キングファイル」の生産です。加えて、海外営業へも着手しており、2012年にホーチミン市事務所を開設しました。
―― 現在は国内に3つの工場がありますね。
上原子 約6万㎡の敷地の中に3工場があり、グループ最大の生産拠点に成長しました。また、現在ではベトナム国内に限らず、東南アジア6ヶ国及びUSAでも販売しており、特にシンガポールとカンボジアが好調で、売上の海外比率もかなり上がってきています。
―― 事業は順調に推移しているようです。
上原子 ありがとうございます。キングファイルは日本初のパイプ式ファイルでグッドデザイン賞も受賞しており、優れた耐久性を持ち合わせた日本シェアNO.1(自社調べ)の商品ですが、赴任当時のベトナムでの知名度はひどいものでした。
また、普及しているのは価格の安いレバーアーチファイルで、日本の需要とはかけ離れていました。弊社でもレバーアーチファイルは販売していたのですが、ユーザー企業は少なかったため、ここまでにするのは長い道のりでした。
―― どのような工夫をされたのでしょうか。
上原子 品質の良さだけを訴えても、既存の商品では競合他社に勝てないと思いました。そこでニーズに合った商品、低価格でコストパフォーマンスの良いレバーアーチファイルを投入するしかないと考えました。
社内にプロジェクトチームを立ち上げ、新たな部材の調達先を探し回り、一般的なローカル製品より低価格にした、品質の高いレバーアーチファイルを開発したのです。
2013年初頭に発売すると、おかげさまで爆発的にヒットしました。キングジムの知名度も上がり、キングファイルやラベルライター「テプラプロ」なども次第にシェアを上げていきました。
キングファイルはレバーアーチファイルより2.5倍ほど高いのですが、ローカル企業にも浸透し、現在は主力商品の1つになっています。
世界中にファンを増やす
―― 御社の販売方法は代理店経由ですね。
上原子 そうです。エンドユーザーに直接販売することはなく、代理店が文具店などの小売店に卸したり、ユーザーに届けたりしています。そのため、各国に進出すると一から代理店を探して、契約を結んでいます。代理店との関係は非常に重要で、彼らに「一緒にやりたい」、「製品を売りたい」と思ってもらわないとうまく進まないことが多々あります。
そのため、新レバーアーチファイルの開発と同時に、代理店との関係も見直しました。やはり日本式では通用しませんから、優秀なベトナム人スタッフを育成し、彼らに代理店との強固な関係を再構築してもらったのです。根本的なことですが、これが現在にもつながっていると確信しています。
―― こうした取組みもあり、国内販売は上昇しましたか。
上原子 2011年の赴任当時から売上は10倍以上になりました。また、当時は日系企業への販売が90%でしたが、今では50%がローカル企業となっています。日系もそうですが、ローカル企業へのニーズはまだまだあると実感しています。
例えば、綴じ厚が15センチ(収納枚数1500枚)もある厚型ファイルも販売していまして、これがローカルの建設会社などによく出ているのです。このように意外なところにも伸びしろがあることは、嬉しい驚きでした。
―― 今後の計画を教えてください。
上原子 将来の需要を見越し、強みである法人だけでなく、幅広い年齢の個人ユーザーにも働きかけていく予定です。また、この5年でベトナム国内だけでなく、ほぼ東南アジア全域に新しい販売ネットワークを築けました。今後はこれらの地域で、ベトナム同様の高いシェアの獲得を目指していきます。
このベトナムを拠点として、世界中にさらなるキングジムファンを増やしていけたら嬉しいですね。
KAMIHARAKO AKIRA
Director取締役
上原子 亮
1974年生まれ。大学卒業後、1997年に株式会社キングジムに入社。営業、開発、海外事業推進の業務に携わり、2011年12月に取締役としてベトナムに赴任。
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