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ベトナムの法律は一筋縄ではいかない。
日本と異なる法体系や頻繁な法改正があるからだ。
頼りになるのは法律事務所や会計事務所だが、敷居が高いと感じる人も…。
そこでSKETCHPROが協力。
日系企業が困りがちな具体例を作り、各専門家に回答をいただいた。

執筆ご担当(50音順)
AGS / DFDL Vietnam / EY ベトナム / TMI総合法律事務所
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 / 長島・大野・常松法律事務所
 
P10
Q. 例年の最低賃金上昇のニュースについては注意を払ってきましたが、従業員の手当や賞与については深く考えてきませんでした。全体的な賃金について再考したいので、留意点を教えてもらえますか?

A. 賃金体系を再検討する時期です
賃金は、残業代や社会保険料等の計算の基準となります。最低賃金が毎年上昇する中、残業代や社会保険料の支払いも無視できません。また、2018年1月1日からは、外国人労働者も強制社会保険の加入対象に含まれる予定で、会社の負担が著しく増加すると予想されます。賃金の中には何が含まれるのでしょうか。

労働法では、賃金は「業務または職位に基づく給与」(=基本給)の他、「給与補助」及び「その他の補助額」を含むと規定しています。これに対し、賞与、シフト交代中の食事、労働契約内の職位及び仕事実現に関係しない手当、補助額は除かれます。

「賞与」とは、企業の業績や個々の従業員の業務達成度に応じて支給される金額です。賃金は減額できませんが、賞与は業績に連動して増減が可能です。ちなみに、「13ヶ月目の給与」として1ヶ月分のボーナスを支給する義務があると思っている方がおられますが、これは法律上の義務ではなく、長年のビジネス慣行に過ぎません。

このように一律に「手当」といっても、賃金に含まれるものとそうではないものがあり、「賞与」的な性質を有するものや、いわば「仕事とは直接関係ない手当」などは後者に当たります。

今まで支給していた「手当」を細かく分析・細分化し、賃金に含まれない賞与や手当に移行することによって、残業代や社会保険料等の計算基準となる賃金の額を下げることができます。

賃金体系の設定は、優秀な従業員を確保する上で検討すべき最重要課題の一つです。従業員や社内の労働組合とよく協議の上、賃金体系を再検討する時期が訪れたといえるでしょう。

回答者 : TMI総合法律事務所ホーチミンオフィス 弁護士 小林 亮