シャープ・エレクトロニクス・ベトナムはシャープの販売会社として2009年に設立。液晶テレビ、AV機器、白物家電、情報機器など多彩なラインナップを展開する。今後は付加価値製品に注力したいと堂本社長は語る。

付加価値製品に注力

General Director 社長 堂本光次

―― ベトナムで人気の製品は何でしょう?

堂本 小型で手頃な価格の製品にニーズが集まっています。カテゴリー別では200Lまでのツードア型の冷蔵庫で、冷蔵庫の売上の約9割はこのタイプです。普及率が低いことが理由だと思いますが、洗濯機やエアコンはこれからだと思います。

―― 空気清浄機などの高額な製品も販売しています。

堂本 ベトナムの一般消費者にとっては手を出しにくい価格帯ですので、まずは空気清浄機をよく知る日本人に広くPRし、その良さを伝えました。また、販売チームが日本人の多いホテル、サービスアパート、学校や塾などに営業に出向きました。その結果、日本人の方々が電気店や量販店に問い合わせをしていただいたのですが、全ての店に置いているわけではない。すると店側は、売れると見込んで製品の展示を考えるわけです。

このようにして日本人だけでなくベトナム人にも関心を持つ人が増え、徐々に評判が広がり、売上は前年比の10倍、20倍と伸びています。ただ、元の数字はかなり低いのですが(笑)。

空気清浄機はコンペティターがほとんどいませんし、量販店でも高級志向の店を中心に置かれるので、大事に育てたいと思っています。湿気が多いベトナムですので、除湿機能を付けた製品を販売するなど、ラインナップを拡充しています。

―― 9月には蚊取り機能付きの空気清浄機を発売しました。

堂本 はい。ASEAN地域用に開発した製品です。空気清浄機にカビ菌などの除去機能のある「プラズマクラスター」と、蚊取り機能を搭載しました。UVライトなどで製品の中に蚊を誘って、取り換え式の粘着シートに貼り付けます。予約販売が出るほどの人気でして、高所得者層のベトナム人が多く買っているようです。開発に5年がかかりましたから、うれしいですね。

―― 今後もこのような商品を販売しますか?

堂本 12月にはベトナムに多いダニを取る、布団掃除機を発売する予定です。熱に弱いダニに40度の熱風を噴射して、吸い上げます。プラズマクラスターも付けて、臭いも取ります。何人かの社員にベッドのマットレスやソファーで試してもらったところ、かなりのダニがいるとがわかりました。今後はこのような健康・環境分野に注力するつもりです。 

ブランドイメージを高めたい

販売は卸店や量販店を通しているわけですね?

堂本 そうです。多くの電気店に商品を供給している卸店と、近年増加している量販店が、弊社の都市部での取引先になります。地方ではいわゆるパパママショップが主流ですね。このような構図は一昔前のフィリピンのようだと感じます。ただ、数年前は卸店との取引額のほうが多かったのですが、今ではそれが減り、量販店が主流になりつつあります。

―― オフィス向けの複写機などはどうですか?

堂本 複写機や業務用の液晶ディスプレイなどの情報機器は、省庁などの政府系機関へのテンダービジネス(入札)と、主に日系企業への直販で販売しています。こちらのターゲットはベトナムの一般消費者やローカル企業ではありません。

―― ベトナムには昔から来られていたとか。

堂本 1991年からマレーシアのペナンに赴任し、その後、シンガポールにも赴任しました。特にシンガポールは周辺国が主たるテリトリーでしたから、90年代から何度も出張しています。その度に大きく変わるベトナムの発展を目の当たりにしてきました。成長著しい有望国です。

―― 豊富な海外駐在経験から、ベトナム人をどう思いますか?

堂本 周りを気にせずに一直線に走る、かな(笑)。根がいい人が多いと感じています。

―― 今後の計画を教えてください。

堂本 価格重視の今のトレンドは、急には変えられないでしょう。それでも、売上の中での付加価値製品の構成比を、徐々に上げたいと思っています。所得を上位、中位、下位と分ければ、上位の下の人たちに弊社の付加価値製品を購入して、評価を広めていただきたい。ベトナムではこれから所得が増えると思いますから、その方が上位の中、上位の上と進む中で、次第に購入層が増えると思うのです。

経済発展が続く新興国では、付加価値製品のニーズは確実に増えます。このニーズに応えるためには、ブランドイメージを高めて、シャープの存在を認知してもらうことも重要。そのための戦略を考えているところです。

SHARP ELECTRONICS (VIETNAM) CO., LTD.
General Director 社長 堂本光次

1961年生まれ。大学卒業後にシャープ株式会社に入社。海外事業本部の営業部に配属後、マレーシア、フィリピン、シンガポール、オーストラリアなどの駐在を経て、2014年10月にベトナムに赴任して現職。