マネジャーや経営層などハイポジション人材の紹介を行うJACリクルートメントベトナム。JACリクルートメントは各国の拠点を持つが、ベトナムが成長率でASEANトップという。設立者でもある加藤社長がベトナム市場を語る。

両面コンサルタントとは

Managing Director 代表取締役社長 加藤将司

―― 御社はマネジャー等に特化した人材紹介会社ですね。

加藤 はい。JACリクルートメント(JAC)自体がハイポジション人材を扱っていまして、弊社で紹介しているのはほとんどベトナム人です。お客様は日系と外資系企業が6:4の割合で、外資系はシンガポール等のアジア系企業が多いですね。ローカル企業はほとんどありません。

業種は金融、商社、建築などが多く、ベトナムへの新規進出、新しい支社の開設、新部門の立上げなど、新組織の発足に伴う人材ニーズが中心です。

―― 加藤さんがベトナム支社を設立されたとか。

加藤 以前は人材紹介会社で、新卒や若手など一般スタッフの人材紹介に携わっていました。人材の活用でベトナム社会を変えたいと思ったのですが、私の力足らずでそこまで至らなかった。そこで、真逆の人材へのアプローチを考えたのです。2012年11月にJACに入社し、2013年6月に設立したのですが、当時は周囲に「絶対に成功できない」と言われました。

なぜなら、JACのポリシーとして、一般的な人材紹介会社の2倍以上のミニマムチャージを設定していたからです。マーケットに、マネジャー層をメインに始めるという宣言でした。ただ、JACの強みである「両面コンサルタント」を育成すれば、他社がリーチできないニッチ領域のハイポジション人材に、潜在的なニーズがあると思いました。

―― 両面コンサルタントとは?

加藤 一般的な人材紹介会社は顧客である企業向けと、企業に紹介する求職者向けで部門が分かれており、両者が連携してマッチングを行います。JACでは同じ人間が企業も人材も担当しているので、彼らを両面コンサルタントと呼んでいます。

ハイポジションの人材は、転職先の社長の性格や目に見えない社風など、企業の求人票に書かれていない要素も重視します。企業側もハイポジション層には、CV(職務経歴書)にある「事柄」よりも「人としての在り方」などを気にします。この「求人票の隙間を埋める」のが両者を知る両面コンサルタントであり、他社とは方向性が違うと思っています。

JACリクルートメントベトナムのスタッフ

―― 方向性の差とは何でしょう?

加藤 一般的には面を広げて、規模で売上げを上げようとします。すると、効率アップと工程の短縮が求められますが、両面コンサルタントでは手間が増えて効率が悪いので、面や規模が広がらないのです。その分、高単価で高付加価値を提供しているわけです。

シンプルな条件マッチングなら最終的にはAIに行きつくでしょうが、JACはCVの実績からは見えてこない人間臭い領域で勝負していきたいと思っています。例えば、製造業の副工場長だったベトナム人が、IT企業のダイレクターとして転職した実績があります。AIにはできないことでしょう。

また、企業トップは常に人材を考えていますから、コンサルタントは会話の中で「このポジションでこんな人は?」と提案できます。求人票が出る前の話ですね。

我々がこの市場を作っていく

―― 業績はいかがですか?

加藤 2017年は、昨年同期比で60%のアップです。2015年に開設したハノイオフィスの業績が好調に伸びており、ハイポジションに特化した人材紹介会社がなかったためだと考えています。ベトナムには個人情報保護法がないため、優秀な人材はCVをばらまかれることを嫌がり、一般の媒体などには登録が慎重になっているのです。

業績と言えば、ベトナムはJACグループ内の成長率で、ASEAN1位でした。

―― それはすごいですね!

加藤 JACには日本、韓国、シンガポール、イギリス、ベトナム、マレーシア、インド、タイ、インドネシア、中国・香港に、30弱の拠点があります。各拠点のダイレクターが1年に一度集まり、各地の業績などを発表するのですが、6月の会議でベトナムは伸び率がASEANで1位、全体でも3位とわかりました。

売上額ですと各国の物価が違いますから成長率ですけど(笑)。

―― 今後の予定を聞かせてください。

加藤 もっとクオリティを上げていきます。コンサルタントの専門性を高めて、よりよいサービスを提供し、採用後に活躍する候補者人材を増やしたいです。現在でもセミナーや、年に一度は海外の勉強会に参加して、他国のコンサルタントと一緒に専門的な知識や対人対応力の強化をしています。

そのため、コンサルタントの専門分野は細分化されてきたのですが、これをもっと深めたい。先のダイレクターの集まりでも、ローカル人材マネジャー育成は全ての国の課題でした。 日系でのベトナムのマネジメント層の人材紹介市場は、我々が今後も創っていくんだと自負しています。これからも走り続けます。

KATO MASASHI
Managing Director
代表取締役社長
加藤将司

1974年生まれ。上海の大学を卒業後、日本の大手情報サービス会社を経て、一貫してベトナム人材の紹介や採用、育成に携わる。2013年6月より現職。弊誌にて『ベトナム人マネジメントの「素」』を連載中。