昨年12月に工場を増設したYKKベトナム。TPPなどの自由貿易協定で縫製業の成長が期待されているが、アパレルに欠かせないファスナーなどを生産する同社にも好影響が出ている。「新工場をモデル工場に」と敷田社長は語る。

アパレルの変化に追随

代表取締役社長 敷田 透

―― 昨年新しい工場が完成しました。

敷田 2年前、ドンナイ省ニョンチャックⅢ工業団地に第2工場の1棟目を建て、昨年12月に2棟目と3棟目を完成させました。工場の敷地は約16万㎡で、グループ内でも最大級の規模です。当初は2棟目、3棟目と順番に建てる予定でしたが、TPPやAEC、ベトナムとEUのFTAなどが追い風になり、お客様からスピードアップを求められ、一気に立ち上げました。
アパレルや弊社のような関連業界は、生産工場を中国からベトナムやカンボジア、バングラデシュにシフトしつつあります。TPPには不明な部分や原産地規則などの問題はありますが、少なくとも2020年過ぎまでは、これらの国の勢いは止まらないでしょう。

―― 顧客はアパレルが多いのですね。

敷田 アパレル系の縫製工場ですね。我々が「バイヤー」さんと呼ぶお客様はユニクロ、GAP、ナイキ、アディダスさんなどですが、直接やり取りするのはこうした企業が委託している縫製工場になります。これら工場の近くでファスナーなどの製品を供給するので、YKKは世界各地に拠点があるわけです。
 
―― 顧客には外資系が多いと。

敷田 取引のある縫製工場を大きく分けると、韓国系、中国・台湾系、ベトナムのローカル企業が各3割で、残り1割が日系やその他の外資系になります。各国で言葉やコミュニケーションの方法、商習慣などが異なるため、弊社には韓国、台湾、中国、香港、シンガポール系のマネジャーが16人おり、その下に国・地域別の営業部隊がいます。
 一方のバイヤーさんは日本、アメリカ、ヨーロッパなどの企業です。今後TPPが始まって一番増えるのはアメリカ系企業で、韓国や台湾系の企業がその受け皿になるでしょう。1990年代後半から2000年代半ばまでの日本が中国進出ブームだった頃、韓国や台湾は日本との勝負が難しいとベトナムやカンボジアに進出しました。その後の冬の時代を知る彼らは、アパレルだけでなく家電などにも強みを持っています。

―― 何種類の製品を作っていますか?

敷田 ファスナーではかみ合う部分の材質に金属やポリエステルなどがあり、生地とつなげる「テープ」の色は1万種類以上、指でつかむ「引手」にはお客様のブランドロゴを入れたり、形を変える場合もあります。基本的にオーダーメイドですから、その組み合わせはほとんど無限です。
 ただ、以前のアパレルはデザインから完成まで1~1年半かかるのが普通で、我々が納品するロットも何十万本、百万本単位もありました。それが近年ではファストファッションの流行もあって、トレンドを重視した少量生産が主流となり、短いリードタイムで少ロットの、小刻みな注文となっています。自ずとYKKのモノづくりも変わりました。

ベトナムの工場を変える

ニョンチャックの第2工場

ベトナムで生産している製品の一部

―― 多くのバイヤーは海外輸出が多いですか?

敷田 はい。世界各国に輸出していますが、近年では国内販売のニーズも高く、皆さん東南アジアでの展開を考えています。ベトナムは小売り規制などで店舗展開が難しい面があり、3~4年前はハードルが高いと他国を選んだ企業もありますが、TPPなどに加えて中間層の増加や、服装やブランドへの関心の高まりなどから、どのバイヤーさんもベトナムに注目しています。TPPの施行が国内市場参入のきっかけにもなると思います。

―― ベトナムでは人件費上昇などの課題もあります。

敷田 弊社も同業他社もバイヤーさんも縫製工場も注視しています。ただ、新興国の人件費はどこも2桁の上昇です。仮に中国が1桁で済んだとしても、人件費の母数が既に大きいので、新興国の競争力はまだまだ大きいと思います。
 実際、弊社グループでも生産量が一番多いのは上海ですが、バングラデシュが3位、ベトナムが4位で、ベトナムは数年で上海と同規模になると思います。私はベトナムの前は上海におりましたが、今後はベトナムが大きな市場になると確信して赴任を希望しました。実際に弊社の売上は伸びており、現在は2009年の赴任時の約4倍となっています。

―― 今後の計画を聞かせてください

敷田 新工場にYKKのノウハウを詰め込んで、グループ全体のモデル工場にしたいのです。現在のベトナムでは定番品や量産品の生産が多いのですが、これらをカンボジアやミャンマーに移して、デザイン性や難易度の高いモノづくりを目指したい。FA化を進め、生産技術を高めて、商品開発に力を入れたいと思っています。4年後の2020年までに行うつもりです。

YKK VIETNAM CO., LTD.
General Director 敷田 透

1968年生まれ。大学卒業後にYKK株式会社に入社。販売部門を経て、新規事業の立ち上げに伴い香港に3年、営業兼マーケティングの責任者として上海に11年駐在し、2009年2月に現職としてベトナムに赴任。

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