ベトナムから飛び立つトリトンブルーの未来
ANA vol.1
整備や安全面のノウハウ、国際的なネットワーク、総合的なサービス力などで「ジャパンブランド」を確立した全日本空輸(ANA)。3年前に赴任した藤崎良一総代表は、「ベトナムの成長を取り込みたい」と意気込みを語る。
「ベトナムの空」の変化とは?
―― 2014年3月からハノイー羽田の直行便が就航しました。利用しやすい時間帯ですから、搭乗者の利便性も増したと思います。
藤崎 ありがとうございます。ただ、弊社はハノイでは新参者で、ANAの知名度はまだまだです。そのため、様々なPR活動をしているのですが、強みとなるのはスカイトラックス(SKYTRAX)社による航空会社の格付けです。昨年に続いて、最高評価の「5つ星」を獲得しました。
―― なるほど。お客はほかに、どんな点で航空会社を選ぶのですか?
藤崎 弊社のアンケートでは、1位は「座席」の居住性でした。前の席と膝との距離や座り心地ですね。こうした点も考慮し、ハノイー羽田には座席に工夫を凝らしたボーイング787ー8型機を導入しています。特にビジネスクラスは全席が通路側。フラットになるシートです。
―― ベトナム発の便で、何らかの変化はありますか?
藤崎 ホーチミン市ではアメリカに行くベトナム人のお客様が増えています。そのため、機内サービスの表記、例えば現在は日本語と英語だけのメニューに、今後はベトナム語を加えたいと考えています。また、今でも少しずつ増えていますが、この5〜10年で日本に行くベトナム人が急増すると見ています。
現在のベトナムの所得は1970年代の日本と似たようなもの。その当時の新婚旅行は宮崎県が多く、経済成長で所得が上がると共にハワイになり、アメリカ本土になり、ヨーロッパへと拡大していきました。それと同じことが今後のベトナムでも起こってくると思います。
願いが叶った46歳からの挑戦
―― ベトナムで働くことで、特に注意していることはありますか?
藤崎 意識するのは「我々がここでは外国人である」ということです。日本と同じ慣習や感覚をベトナムに求め、あるいは押し付ける人もいますが、違って当たり前です。仮に腹が立っても、表に出さないように心掛けています。
もうひとつは、できるだけ仲良くすることを心掛けています。当社には日本の駐在員も数人いますが、文化も歴史も違う場所にポンと放り込まれて、一緒になって便を飛ばす仕事をするわけです。当社には「和協」という言葉を重んじる文化があります。これは弊社二代目社長の岡崎嘉平太が唱えた言葉ですが、ベトナム人との関係はもちろん、駐在員同士でも和を保ちたいと常に思っています。
―― 2011年にホーチミン支店長に就任したわけですが、どんなお気持ちで赴任されたのでしょうか。
藤崎 私は赴任前に、「ベトナム」や「ホーチミン市」に関わる対応をしたことは一度もなかった。それくらい当社内では話題に上がらない、よく言えば問題がない支店だったわけです。海外にもよく出張していましたが、就航地のうち3都市だけは行っていませんでした。その1つがホーチミン市。しかも、プライベートでも訪れたことがなく、まったくの無知でした(笑)。
ですが、実は弊社に入社したのは、海外で働きたいと思ったからなんです。ただ、辞令を受けた時は既に46歳でしたし、何らかの形で海外赴任を経験してから支店長になるのが一般的でしたから、もう可能性はないと思っていました。ですから、「ホーチミン支店長」と言われた時は、それは嬉しかったですね。
激化する「空の競争」への戦略
―― これからは他の航空会社やLCCとの競争が激化すると思いますが、どんな戦略をお持ちですか?
藤崎 予約から、空港、機内でのサービス、飛行機の新しさ、それから定時性など、お客様の快適性を向上させることに尽きると思います。「LCCとは違う」と思っていただけること。そしてそこにお金を払う価値を見出していただけるよう、精進したいと思います。
また、ネットワークの強みも活かしていきたいと思います。2012年4月からは米ユナイテッド航空との提携を強化し、運賃やダイヤの調整を行っています。例えば、アメリカではANAがユナイテッド航空のターミナルで発着し、ユナイテッド航空のお客様がANAに乗り継ぎますので、弊社のサービスを実感していただける機会が増えていると思います。アメリカでの知名度はアップしていますし、今後もこうした戦略は進めていくでしょう。
ベトナムにおいては、到着した羽田・成田からの日本国内線はもちろん、欧米や中国などへの、国際線へのネットワークをもっと利用していただきたいですね。弊社の中期計画では「アジアの成長を取り込む」を掲げています。ベトナムの成長を取り込んで、多くのベトナムの方にANAの翼に乗っていただきたいです。
ALL NIPPON AIRWAYS CO.,LTD.
General Director, Vietnam
藤崎 良一
1965年生まれ。福岡県出身。大学卒業後、1988 年に全日本空輸株式会社に入社。営業本部や成田空港などに勤務後、AIRDO への出向や広報室を経て、2011 年にホーチミン支店長としてベトナムに赴任。2014 年にベトナム総代表となる。
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