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成長期に入った小売市場で、日系企業が躍進している。コンビニやスーパーなど近代流通がベトナムに根付き始め、消費者のライフスタイルも変えようとしている。他の外資系企業や、地場小売業を押さえて勝つ秘訣は何か。独自の展開を続ける3企業のトップが語る。

 
 

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2011年12月にホーチミン市に1号店を出店したミニストップ。当時は地場企業のフランチャイジーだったが、17店舗まで出した後で契約を円満解消。2015年4月から双日と共同でベトナムでの店舗運営に注力し、出店を加速させている。

半径5㎞以内に集中出店

「今年の7月に50店舗目をオープンし、現在は61店舗となりました(10月現在)。年末までに80店舗、2017年末に160店舗とする計画で、2024年には800店舗超を目指します」

同社の出店地域はホーチミン市を中心としたエリアで、半径5㎞以内に60店舗が集まっている。商品の物流や配送、各店を巡回して指導するストアアドバイザーのためにも、集中型は効率が良いそうだ。今後は同地域内に300店舗までの出店を予定している。

「多いと思うかもしれませんが、仮にコンビニ4社が各300店舗出して1200店舗となっても、ホーチミン市の人口800万人で計算すると6600人に1店舗です。日本なら人口1億1000万人で5万6000店舗ですから、2000人弱に1店舗。まだ余地があると考えています」

店内で飲食できるイートインがミニストップの特徴だが、これは日本での1号店から変わらない。他のコンビニでもイートインを持つ店舗はあるが、同社ではベトナムでも全店舗に備わっており、顧客に好評という。夕方から夜の利用者が多く、夕方は学生、夜は母親と子どもが中心。母子は夕食を終えた母親が子供を連れて来店し、ドリンクやアイスクリームなどを食べさせているようだ。

ただ、イートインを作ると店舗の面積は増えるので、コストアップにもつながる。実際、日本ではスタンディングスタイルが多いそうだ

「ベトナムでビルを借りる場合は丸ごと1棟の契約がほとんどなので、2階や3階にイートインを作ることが多いです。部屋のサブリースは難しいので、ちょうど良い利用方法ですし、今後も落ち着ける環境を提供していきます」

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9ミニストップの店内の様子

売れ筋商品はソフトクリームとおでん。伸びているのが弁当、サンドイッチ、おにぎりなどで、こうした食品の製造工場を日系企業が建設中とのこと。来年3月に稼働予定で、仕入れ先が現在の1社から2社に増える。新たな商品開発チームも加わり、より顧客ニーズに合った商品が提供できると期待している。

「弊社はイオンのグループ企業ですから、イオンベトナムやAEON Citimartといったグループ会社との共同調達ができます。例えば、食品などの容器は電子レンジで使える耐熱性なので、値段が割と高いのです。ロットが大きくなればこの分のコストを下げられるので、商品の価格を下げたり、品質を良くしたりできます」

PB商品の現地生産へ

グループ企業のメリットは他にもある。同社ではイオンのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」も扱っているが、現在は日本からの輸入品なので価格は割高になる。だが、イオンベトナムはトップバリュの委託生産をベトナムで始める予定で、ドリンク、スナック、袋麺類などをローカル製品と同様の価格帯で提供できるという。

日本からの輸入品は、価格とともに賞味期限が問題だ。船便だと日本を出荷してから店頭に並ぶまで3ヶ月かかる場合もあり、賞味期限が5ヶ月では販売可能期間は1ヶ月程となってしまう。

「また、販売数が出ないと次から大量に仕入れられないなどの制約もあり、現地生産でこれらの問題も解決できます。PBではパンや牛乳などのデイリー商品を多く売りたいですね」

他のコンビニ各社でも展開しているが、同社でもブランド認知度拡大と店舗顧客誘引を目的とした、期間限定イベントやキャンペーンを開催。昨年から当地におけるポケモンのライセンシーと提携してキャラクターとしている「ピカチュウ」のスタンプラリーや、店ごとにデコレーションしたハロウィンなどだ。

後者は店内、レジ、イートイン席などをハロウィン仕様にするもので、若いスタッフたちが「乗って」やってくれるという。

「スタッフが楽しんで、お客様を巻き込んでくれるためか、イベントの開催で売上は上がっています。我々は後発ですから認知度を上げることが大切。今後はイベントをブラッシュアップし、新しい工場ではイベント限定の新メニューも開発したいですね」

もうひとつの目標は、ファストフードの開発だ。例えば代表商品のひとつであるソフトクリーム。現在の価格は1万VND以下だが、ワンランク上の「プレミアムアイスクリーム」を開発し、価格1万9000VNDで試験販売を実施(限定店舗)。日本のように生乳と生クリームで作り、コーンも高品質なものに変えているという。

「現在のベトナムは、コンビニ1号店ができた40年程前の日本のようで、まだまだ成長の余地があります。弊社は全てが直営店ですが、店舗網の拡大に向けてフランチャイズ店を検討しています。オーナーの安定収入を考えながら、来年にもトライするつもりです」