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ベトナム製造業の弱点は裾野産業の未発達だ。その中で奮闘を続ける日系サプライヤー各社。国内市場に注力する日系企業は、ローカルや外資系に勝つために何をしているのか。キーワードは「日本方式の踏襲」だった。

 
 

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業界大手の文化シヤッターの子会社であるBX文化ベトナムは2010年3月、北部フンイエン省に工場を竣工。徐々に設備を増強し、各種のシャッターやドアを生産する。注力するのは国内販売、昨年からアジア輸出をスタートした。

国内需要を求めてベトナムに進出

BX文化ベトナムは建材向けの一般的なシャッターから始め、スチールドア、高速で開閉する高気密の高速シートシャッター、高層マンションで使用される軽量鋼板ドアなどを順次生産。現在では月にシャッターを約70セット、ドアを約600セット作っている。同社は月産でシャッター100セット、ドア2500セットが可能という生産規模であり、当初は十数人だった従業員が現在では約135人に増えた。

「工場の立ち上げ時は、日系製造業の工場向けシャッターから生産を始めました。そのため、北部での仕事が中心だったのですが、昨年からは工場の他、大型ショッピングセンターや倉庫など南部の受注が増加し、現在では南部での仕事が多くなっています」

ベトナムは文化シヤッターの海外初拠点だが、当初から生産工場を目指していたわけではない。CADを使ってシャッターの施工図を作るCADセンターを、2005年にホーチミン市に設立。このアウトソースが順調に進む中でベトナムの経済成長が顕著になり、将来のニーズ増を見込んで国内向けの生産と販売を考えたという。国外輸出を目的としたEPE(輸出加工型企業)とは異なる。

4工場

5工場内での生産現場

同業他社は同規模が数社と多くの小規模サプライヤーがあるが、商品は重なっておらず、例えば広い間口に耐えられる、5m×5mといった大型シャッターを生産できる会社はほとんどないという。また、業績が伸びている理由は商品の特性や品質以外にも、販売、設計、自社工場での生産、現場での施工、アフターメンテナンスまでを組織的に行う企業がほぼないためだと松本氏は見る。

日本では珍しくない一貫体制だが、ベトナムでは生産したシャッターは販売店に納入し、修理なども生産者が直接請けないのが一般的だそうだ。つまり、ベトナムにはなかった新市場とも言える。

「ですので、今後はドアやアルミサッシ、カーテンウォールなど、建具関連の日本企業が進出しそうですね。文化シヤッターでは国内市場により食い込むため、今年2月にローカル建材メーカーと資本提携しました」

文化シヤッターは樹脂サッシやアルミサッシ、ドアなどの製造・販売を行う、建材業界大手のユーロウインドウ社の株式を約30%取得した。この企業は全国規模で建材の生産・販売しているので、各種の商材を仕入れられるのと同時に、BX文化ベトナムの販売チャネルにもなるという。高いシナジー効果が期待できそうだ。

「顧客を日系企業だけでなく国内企業に広げるため、同業のパートナーが欲しかったのです。国内では大手から中堅の地場ゼネコンと少しずつ取引を進めていますが、もっとスピードを上げたいですね」

ベトナムからアジア各国へ輸出

日本への輸出は以前にトライしたものの、採算が合わずに断念。しかし、昨年からはアジアへの輸出を始めた。一番多い輸出先がインドネシアで、カンボジア、タイと続き、最近はミャンマーへもスタート。商品は高速シートシャッター、各種シャッター、スチールドアなどで、多いのはドア類だそうだ。今年は売上全体の2割に届く勢いだという。

海外展開は文化シヤッターの念願であり、2020年度の海外事業の売上高を、現在の約5倍となる80億円超に引き上げる計画だ。その軸となるのが生産拠点のBX文化ベトナムであり、ベトナム進出後には台湾で現地企業との合弁会社を設立し、インドネシアには駐在員事務所を開設した。ベトナム国内需要と共に、アジア各国への展開を強化する。

「日本市場は2020年のオリンピックに向けて内需が非常に活発ですが、その先は不透明です。海外事業はこれからの柱になると思います」

6スチールドア

ベトナムならではの苦労もある。例えば、ベトナムには耐火基準があるが、日本の防火基準にように明確ではなく、書面の基準と実際の運用に差が出る場合があるという。そのため、毎回の施工の現場では、ゼネコンや消防局との確認作業が生まれることもある。

ただ、施工の現場というのは『3K』ですし、暑い中での作業や危険な仕事もあります。その中で今まで大きな事故がなく続けられたのは、ベトナム人スタッフがしっかりとやってくれたおかげです」

ベトナム国内のシャッター市場は拡大しており、ショッピングセンターやマンションなどへと市場が少しずつシフトしている。BX文化ベトナムでもこうした市場での案件を増やしたいと考えている。

「ベトナムに赴任して8年目ですが、高品質のシャッターのニーズは今後も高まると思っています」