ベトナムに進出した製造業の大きな悩みは、現地調達率の低さだ。優秀なローカル企業は少なく、部品や部材を輸入に頼る日系企業も多い。ただ、現調率は少しずつ上昇しており、ローカル企業も成長中だ。今、ベトナムの裾野産業は変わりつつある。

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ベトナム側の取り組み
着実な準備段階

外国投資家の要望を汲み取り、投資の促進や企業間のマッチングなどを支援するホーチミン市貿易投資促進センター(Investment and Trade Promotion Center)。最新のホーチミン市、そしてベトナムの裾野産業はどうなっているのか。

ホーチミン市裾野産業の現状

Deputy Director Mr. Nguyen Tuan
METALEX VIETNAM 2015では、日本貿易振興機構(JETRO)と連携して「部品調達展示商談会」を開催したITPC。同センターではこうしたビジネスマッチングの他にも様々な支援活動や情報提供を行っており、この数年は海外からの投資が増加しているという。ホーチミン市統計局の調査では2015年初頭から9月15日までに、外資系の投資プロジェクト397件に投資ライセンスを発給。投資資金総額は約23億6280万USDとなり、前年同期比で115.3%増とのことだ。

これに伴い、ローカル企業への部品の需要が高まっており、外資系大手グループの調達パートナーになる大きなチャンスが生まれている。ただ、商工省の推定では裾野産業の原材料は80%を輸入に頼っていることもあり、現地調達率はまだ低い。

「この20年、ベトナムは順調に海外投資を誘致してきましたが、ベトナムの企業は海外から導入される技術や知識を吸収しきれていません。大きな原因は裾野産業の未発達で、企業数が圧倒的に少なく、あっても包装産業や梱包材製造業が中心だからです」

METALEX VIETNAM 2015には中嶋総領事も出席
(右から3人目)
そのため、進出する外資系企業に部品を調達しているのは、在越の外資系サプライヤーがほとんどだという。ローカル企業は中小企業が多いこともあり、高品質の要求に対応できる能力はまだ低いようだ。それ以外にも、外資系企業や国内大手企業と裾野産業との接点が少なく、こうした中小企業への認知度が低いことや、外資系企業は契約を重視するが、ローカル企業は全般的に法律の知識が乏しいなどが理由にあるという。

「同じ分野の企業同士が提携し、工業的な企業群ができると、技術のシェアや競争力の向上が生まれます。ベトナムではこうした企業群はあるものの、全体としての計画はなく、効果があまり出ていません」

裾野産業発展への施策

このようなことから、2014年に商工省から裾野産業開発マスタープランが通知され、2020年までの裾野産業の開発計画および2030年までのビジョンが明らかになった。全体目標は2020年までにベトナムを基本的に工業国にすること。そして、裾野産業の製品は内需の45%(2030年までは70%)を提供し、国内生産指数の25%の輸出を行うこと。

出展企業を訪ねるMr. Nguyen Tuan
「この目標を達成するためにベトナムは2020年までに、以下の裾野産業の3分野を発展させていきます。ホーチミン市もこれに従って、全国と力を合わせて実現を目指します」

 ・金属、ゴム・プラスチック、電気電子の部品製造。2020年までに基本的にベトナム国内需要の60%に、2030年80%に対応できるようにする。機械パーツ、自動車部品、農業機械パーツ、電子部品の製造産業は優先的に発展させる。部品メーカーが近隣諸国や国際市場に参入できるように支援する。

 ・繊維、革靴分野。国内の衣料産業の需要の65%、革靴産業の需要の75~80%に供給できるようにする。繊維と革靴産業用の原材料、付属品分野を優先的に誘致する。また、重点的な経済地域では、関連する各繊維・革靴工場が連携できる企業群を作る。

 ・ハイテク工業分野向け。ハイテク産業のための専用サポート機器、技術を吸収するためのサービス及びソフトウェアに関する事業を同時に発展させる。ハイテク産業において、国際水準で機械のメンテナンスや修理ができる企業群を形成する。

「これらを実現するため、裾野産業に関する法的な枠組みを完備したり、国内への投資誘致を強化して外国企業との連携を図るなどの他、裾野産業企業の社数と生産能力の向上、科学・技術の発展、企業と緊密に連携した人材育成などを進める計画です」

日系企業への対応

出展企業を訪ねるMr. Nguyen Tuan出展企業を訪ねるMr. Nguyen Tuan

ベトナムの企業は日系企業の要求に満たすために、どのような工夫をしているのだろか。ITPCによると、外資系企業との連携を強化し、積極的にビジネスパートナーを探して、商談のチャンスをつかんでいるローカル企業もあるという。また、裾野産業向けの技術や人材教育に注力している優良企業の数は徐々に増加しており、技術面で遅れている企業の数は減りつつあると語る。

「インフラ設備が整った裾野産業専用の工業団地の建設も進んでいます。ここで生産を拡大し、内需に対応し、将来的には輸出も視野に入れています。また、特に表面処理分野の企業は、電気電子産業や自動車産業向けに、より高品質な製品の生産能力アップを計画しています」

また、「越日協力の枠組みにおける2020年に向けたベトナム工業化戦略及び2030年へのヴィジョン」においては、現在ベトナム工業の36分野のうちで強みや展望がある分野を、電子産業、農業機械産業、農水産品加工産業、造船産業、環境・省エネ産業、自動車・自動車部品産業としている。これらの6分野には今後、注目が集まりそうだ。

「海外からの投資が進んでいる今が、技術移転のできるチャンスです。裾野産業は今後発展し、輸出の可能性もあると考えています」