COLOWIDE VIETNAM CO.,JSC.
牛角登場!現場の力でドミナント戦略に挑む

 

2012年9月に和食レストラン「NIJYU-MARU」、2014年12月には焼肉レストラン「牛角」をオープンしたコロワイドベトナム。現在では各5店舗、2店舗へと展開し、年内に牛角を4店舗増やすという。進出5年で計80店舗が目標だ。

 

2業態を核にして5年で80店へ

牛角の焼肉 (写真提供:コロワイドベトナム)

東南アジア9都市に出店中のコロワイド。ベトナムにおいては、流通大手のフータイホールディングスと2012年から業務提携を進め、2014年8月には合弁会社であるコロワイドベトナムを設立した。日本のレストランチェーン企業では初のJV設立認可だったという。

寿司、焼肉、レストラン、和食、居酒屋と多くの業態を持つ同社で、高坂氏が進出1号店にしたのはNIJYU-MARU。ローカル客向けに低価格の和食を考えたのと、ベトナム人パートナーが「これがいい」と選んだからだという。2業態目を牛角にしたのは、ベトナム人の焼肉好きを狙ってのこと。都市部で成功している日系焼肉店の存在も大きかった。

「ベトナムの牛角は割安の焼肉店ではなく、『古き良き日本の焼肉屋』がコンセプト。1日の平均客単価はNIJYU-MARUが約7ドルですが、牛角は約20ドルです。前者は9割以上がベトナム人客、後者は約3割なので、牛角にもっとベトナム人を呼びたいですね。牛角は年内に新しく4店舗を出店予定です」

基本的にこの2業態で進めるというが、2年半も経たずに計7店を出し、今後はその速度を上げていくようだ。これは集中的な出店でシェアを高めるドミナント戦略であり、外食チェーンは数店の出店ではメリットが生まれにくいという。

「ベトナムへの進出を検討するにあたり、社内にベトナムチームが組まれました。当初、メンバーは私一人でしたけど(笑)。その後視察に来て、業態や事業計画を決定し、ベトナムに駐在後1ヶ月で会社を設立。4ヶ月後には1号店を開業させました。その頃を思い出すと、今でも吐き気がします(笑)」

 

開店して気付いた「ベトナム人」とは?

ベトナムの牛角の店舗

コロワイドは牛角を運営するレインズインターナショナルを2012年に、かっぱ寿司のカッパ・クリエイトホールディングスを2014年に買収し、グループ全体の売上高で外食業界有数の大企業となった。ただ、日本国内の需要減少に伴い海外、特にASEANに注目し、ASEAN全体で5年後の450出店を目標とした。しかし、国により様々な「壁」がある。

「外食チェーンでは『一括ベンダー』と組むのが一般的で、日本では商社などが行っています。肉、野菜、魚などの食材、割りばしやおしぼりといった店舗消耗品などを一括して取り扱い、各店舗に運ぶ業種ですが、これがベトナムに見つからない。何社かのサプライヤーに依頼して、徐々に構築を始めているところです」

ベトナムで事業をする中で気付いたこともある。ひとつはベトナム人スタッフへの、サービス教育の難しさ。日本人は子供のころから「日本式飲食業」のサービスを受けているが、当然ながらベトナム人はこうした「世界でも特殊なレベル」のサービスを受けていない。そのため、日本人が感覚的に身に付けたサービスを初歩から教えていく必要があり、導入教育を重視しているという。

もう一つ感じたのは、ベトナム人は意外に「辞めない」。

「ベトナムは離職率が高いと聞きましたが、弊社の主要スタッフは創業メンバーのままですし、日本の平均的な離職率と同じくらいだと思います。従業員には給与面でも報いたいですが、これからもこの会社で働きたいと思ってもらいたい。飲食店は、良くも悪くもヒューマンビジネスですから」

マンパワーに頼るところが多い分だけ、ある意味、生産性の低い業種。ただ、逆に個人の能力がクローズアップされやすく、それが評価につながっていくという。

 

年内に橋頭堡を構築

General Director 高坂信太郎氏

1月からの外資系の独資参入については、まだ実感が持てないと語る。

「外国資本100%も1%も外資は外資。ローカル企業とは別だと見なされ、多くの制約が生まれます。独資も合弁も、それぞれによい点があればそうでない点もある。ほかにも難しいことは多いですが、ベトナム人のニーズをつかむ方が百倍大変ですよ(笑)」

飲食店には適用されないと言われているENTについても、当然なのか審査はなかったという。ただ、「2号店を出した外資系企業の事例は少ないのでは」と高坂氏は訝しむ。いわゆる「名義借り」であればローカル企業になるのでENTはないからだ。

「外資規制うんぬんに関わらず、現場の人間にすれば、営業ライセンスの取得は絶対の使命。規制緩和に関する話は耳にしますが、実感はないですし、過剰な期待もしていません」

日系の外食チェーンが今後ますます進出するのは、間違いないと高坂氏は見る。実際、同業他社が進出を検討しているという話を聞いたことがあるそうだ。ただ、どのような業態を出店させたいのか、直営展開をするのかなど、企業や経営者のポリシーによって参入方法は分かれるという。

「今後の日系外食チェーンについて、個人的にはファミレスが面白いと思います。我々も負けませんが(笑)」