節の贈り物はベトナムの風物詩。テト前には、お菓子やお酒をバイクで運ぶ光景が街中で見られます。シーズンオフの今、公務員との「お付き合い」の範囲について考えてみます。

ベトナム刑法の「賄賂」の定義は、200万VND以上(2009年改正前は50万VND以上)の価値を持つ金銭、財産または物質的利益となっています。もちろん、200万VND未満でも悪質な事案であれば「賄賂」と認定され、収賄者のほか贈賄者も処罰される(1年以上6年以下の懲役刑)こともあります。

一方、公務員の贈答に関する2007年の首相決定64号は、贈答を受けた公務員に報告を義務づけ、その例外として、病気・慶弔・祭りやテトなどの年中行事の際の、特定目的のない50万VND未満の贈答には、報告義務を免除しています。ちなみに、日本の国家公務員倫理法では、利害関係者からの贈答・接待は一律禁止、本省課長補佐級以上には贈与・接待1件あたり5000円超で報告義務が発生します。

これらの法令からみて、「お付き合い」の範囲としては、50万VNDが一応の目安になるのではないでしょうか。また、法令上は現金と品物・サービスは同じ扱いですが、皆で分けられる食べ物などの品物であれば、実際には、社会的儀礼としてより認められやすいと思われます。なお、「公務員」には、国有企業の管理職を含むと解釈されており、注意が必要です。

企業のコンプライアンス実現のためには、このような金額や形態による基準作りと、事前・事後の報告、レクチャーや架空のケースを使ったディスカッションなどの定期的な研修といった、手続き面の整備をうまく組み合わせることが大切です。

小幡 葉子
Obata Yoko
TMI総合法律事務所ハノイオフィス勤務。日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。1992年より雨宮眞也法律事務所にて企業法務を担当、JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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