トナムの2015年のGDP成長率は6.68%で、2014年の5.98%と2013年の5.42%より高かったにもかかわらず、2015年のVNインデックス上昇率は+6%に留まった。2014年の8%と2013年の18%より低かったのだ。その要因は大きく2つ考えられる。

1つは、海外からベトナム株への資金流入が大幅に減少したためだ。2015年の海外投資家の買い越しはわずか1億2000万USDで、2014年が1億9000万USD、2013年が3億2000万USD。昨年末の米連邦準備理事会(FRB)の利上げの噂が以前よりあり、海外投資家に影響したと考えられる。もう1つはベトナム通貨ドンの為替リスクだ。2013年、2014年と連続で輸出超過になったが、2015年はベトナムが輸入超過状態に戻り、為替レートの調整に圧力を加えた。また、昨年の中国人民元の切り下げの影響を受け、ベトナムドンも切り下げた。これらの2つの要因は、2016年もベトナム株式市場に影響し続けると予想される。

とはいえ、TPP加盟により、外国直接投資(FDI)の誘致と輸出活動の拡大が期待されるなど、経済面で明るい要素が多くある。総じていえば、2016年のベトナム株式市場は高い成長率の達成は難しくても、安定性があり、一部の分野では平均より高い上昇率を示すと思われる。

特に、倉庫・運輸・港湾、建築・建材、輸出関連の繊維縫製業・靴製造業、電力事業などだ。建設・建材の成長はFDIの増加と政府のインフラ整備への投資優先政策のため。各貿易自由協定のおかげで、繊維縫製業は大きな恩恵を受けそうだ。これらの経済活況が電力事業の好景気につながると思われる。

グエン・ドゥック・フン・リン
Nguyen Duc Hung Linh
Saigon Securities Inc.の個人向け分析・投資コンサル部門マネジャー。シンガポールでMBA、ハノイで学士号を取得。シンガポールで市場分析家や法律専門家として勤務後、2011年より現職。
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