業員を雇い入れる場合、労働法により、3ヶ月未満の一時的雇用を除き、文書で雇用契約を締結する必要があります。注意点は以下の通りです。

①ベトナム語版が必須です。外国語版も作成できますが、内容に違いがあるときには、ベトナム語版が優先されます。

②社長・副社長などの経営陣も、雇用契約を締結すれば、労働者としての保護を受けます。期待した業績が上がらなくても、一度締結した雇用契約の内容は、一方的には変えられません。

③試用期間がある場合、期間終了前の3日間に試用の結果を労働者に通知し、試用の結果が雇用者の要求レベルに達していれば、期間終了後、ただちに雇用契約を締結します。

④労働法令は、雇用契約書に必ず記載する事項を列挙しており、どれかが欠けていると、労働監督当局から指摘されることがあります。そのうちの重要な事項を以下に挙げます。

a/複数の勤務地や、異動の可能性がある勤務地がある場合は、単に「勤務地」とするのではなく、「主な勤務地 ○○市」のように記載します。

b/雇用契約期間を記載し、雇用契約開始日と終了日(有期限契約の場合)を明記します。

c/給与の基準、職務・職位に関連する手当の項目と金額、その他の補助額を記載します(記載が義務付けられていないのは、賞与・食費補助・冠婚葬祭補助・事故見舞金など)。

d/社会保険・失業保険・医療保険の給与に対する保険料率を明記します。

ベトナムでの雇用関係は、契約書に書かれた内容どおりに決まるものと考え、あとでトラブルにならないよう念入りにチェックしましょう。

小幡 葉子
Obata Yoko
TMI総合法律事務所ハノイオフィス勤務。日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。1992年より雨宮眞也法律事務所にて企業法務を担当、JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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