初に民事上の時効一般についてです。日本法下では、一般に債権は10年間行使しないときは消滅すると規定しています。これに対してベトナム法下では、債権そのものの消滅ではなく、債権について裁判所に対し訴えを提起する権利が消滅する(提訴時効)という形で規定しています。例えば、民事契約や不法行為に基づく損害賠償請求、商事紛争では、権利を侵害された日から2年が経過すると、裁判所に対して訴えを提起することができなくなります。

では、「裁判所に対して訴えを提起することができない」とは、どのような状態なのでしょうか。債権者が裁判所の判決を得て強制執行することはできなくなりますが、債務者が債務を負わなくなるのではなく、債権者は(期待できませんが)債務者が自発的に債務を履行するのを待つことになります。その結果、実際上は債権が消滅するのとほぼ同様の状態になるのです。
次に、民事事件の提訴時効の中断です。2年間の提訴時効期間の進行は、次の事由があれば止まります(提訴時効の中断)。
①債務者の債権者に対する、債務の一部または全部の承認。②債務者の債権者に対する、債務の一部履行。③債務者及び債権者による和解。

ただ、これらの事由がなくなれば、もう一度最初から2年間の提訴時効期間のカウントが始まります。
最後に債権の管理です。ベトナム法下では、日本法下より短期間で債権回収ができない場合がありますので、留意が必要です。債権者は債務者に対し、履行期日遵守のために密接に連絡を取る他、履行期日が徒過した場合には一部でも債務の返済を受ける、債務者に対し支払計画書や債権確認書を書面にて提出させる等の方法が考えられます。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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