回は、ベトナムの商慣習上重要な役割を担う会社印鑑についてです。今年7月1日から改正企業法が施行され、会社印鑑制度について以下の通り変更されました。

改正前は、所定の内容が記載された所定の形式の印鑑を、公安から受領するものとされていました。会社印鑑は必ず本社に備置・保管されなければならず、法的代表者は、使用・管理に責任を持ち、また、個数は例外的な場合を除き1個とされていました。

改正企業法では、会社は会社印鑑の内容、形態、個数を決定する権利を有するものとされ、法文上は会社独自のデザインで作成することが可能となりました。もっとも、その場合でも、印面には会社の名称、会社コードを記載しなければなりません。また、一人有限会社は会社所有者、二人以上有限会社は社員総会、株式会社は取締役会の決定・決議を経る必要があります。

さらに、会社印鑑の公安への登録は不要となりましたが、会社は印鑑の使用前に国家事業登録ポータル上で公開するために、事業登録当局に対して会社印鑑の通知を行い、国家事業登録ポータルへの登録の通知書を受領する必要があります。会社印鑑の使用及び保管については定款で定めることができるようになりました。

会社印鑑については、政令によってより細かいルールを規定する予定となっていますが、7月15日現在ではまだ制定されておらず、今後制定される政令や運用を見守る必要があります。近い将来、さまざまなデザインをした個性的な印鑑が見られる日が訪れるかもしれません。読者の皆様も、ベトナム人従業員と会社印鑑のデザインについて協議してみてはいかがでしょうか。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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