在員Qさんの自宅に、突如数名の警察官が現れました。どうやら「逮捕する」と言っているようです。何ら思い当たる節のないQさんは、どうしたらよいでしょうか?

まず、速やかに通訳できる知人およびベトナム人弁護士、そして大使館または領事館に連絡すべきです。ベトナム人弁護士のコンタクト先がない場合は、日本人弁護士に連絡しましょう。弁護士および通訳者を通じ、嫌疑の詳細を尋ねる必要があります。

また、ベトナム刑事訴訟法上、現行犯として逮捕される場合を除き、何人も裁判所の決定、検察院の決定または承認なくして逮捕されないと規定していますので、逮捕理由を示す裁判所ないし検察院の決定書を確認しましょう。誤認逮捕を避けるため、パスポートや在留許可証も提示した方がよいです。なお、逮捕ではなく緊急時の身柄拘束というものもあり、これは重大な犯罪の準備行為、逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合に身柄拘束されるもので、決定書はありませんが、根拠となる事実については可能な限り説明してもらうべきです。

それでも逮捕されてしまった場合、捜査当局は逮捕時点から24時間(2016年7月1日施行の新法の下では12時間)以内に被逮捕者の供述を聴取し、釈放するか否か決定しなければなりません。24時間(または12時間)経過後も暫定留置決定書を受け取らない場合は釈放されます。また、被逮捕者には憲法上は弁護人選任権、法律上は自己負罪拒否特権が認められていますので、弁護人が選任されていない段階では意味内容を確認できない書類の署名は拒否すべきです。

外国人である我々にとって、予測不能な事態が生じ得るのが外国。自己解決しようとせず、専門家を頼りましょう。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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