んにちは、AGSの辻です。昨今、多くの日系企業がベトナムに進出していますが、ベトナム進出の際には一から事業を立ち上げる他に、いわゆるM&A(企業の合併や買収)によって進出を行うケースもあります。今回は代表的なM&Aのスキームである、「資本譲渡」および「事業譲渡」についてご案内します。

まず資本譲渡ですが、こちらは既存の会社の持分を買収し、その会社自体の所有権を得るというスキームです。この方法ですと新たにベトナムに会社を設立する必要がなく、比較的短期間で譲渡手続きを完了することができます。しかし一方で、簿外債務、取り分け、未払税金債務も引き受けることになりますので、通常は資本譲渡時に税務デューデリジェンス(対象となる会社の税務リスク調査)が行われます。

もしも、税務デューデリジェンスの結果、買収対象会社の税務リスクが一定数あると判断された場合はどうすればよいでしょうか。その際には、目的とする事業を行うために必要な資産やノウハウのみを買収する、事業譲渡にスキームを切り替えることも考えられます。

ただし、事業譲渡によってベトナムに進出を果たすためには、その事業の受け皿となる会社が新たに必要となります。ベトナムに新会社を設立した上で事業譲渡を行う必要が出てきますので、資本譲渡よりも追加の期間や費用を要することになります。

M&Aを行うには様々な専門知識が必要となりますので、M&Aでのベトナム進出をお考えの際には、専門家にご相談されることをお勧めします。次回はM&Aにおける税務についてご案内します。

辻 雄太
Tsuji Yuta
AGSホーチミン事務所に勤務する米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
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