賢者の税務・会計術 vol.046

こんにちは。AGSアカウンティングの堀切です。「堅苦しい税制を、少しでも身近なものへ」をテーマに、本稿では移転価格文書作成に関する具体的な意思決定について解説をします。
 
移転価格文書作成の必要性は理解したが、今ひとつ何を決めれば良いかわからない方は、ぜひ最後までご一読ください。

いつまでに
作成すればいいのか

移転価格文書は、法人税の確定申告期限までに作成する必要があります。つまり、2021年12月期の移転価格文書は、2022年3月末までに作成を完了しなければなりません。
 
しかし、商業データベースから取得する「比較対象企業」の財務数値として2021年分のデータを利用する場合は、データベースの更新を待たなくてはなりません。期日までに作成を終えるためには、過年度の数値との比較を検討しなければなりません。
 
一方で、当年の当社財務数値と、過年度の比較対象企業の財務数値を比較して作成された移転価格文書には、問題があるのではないかという懸念が生じます。
 
法令に定める作成期日を重視するか、または「税務調査までに作成する」等の一定の社内方針を定めるか、経営意思決定が必要になります。

移転価格文書は
保証にはならない

移転価格税制対応の現実的な問題として、外部コンサルタントが作成した移転価格文書に基づき、関連者取引の価格設定を改定するケースは稀である点があげられます。
 
相当の時間とコストを費やして移転価格文書を準備しても、それらは客観的な情報に基づき計算された適正価格の説明文書ではなく、ある前提条件の中で作成された関連者取引価格を説明する文書です。「移転価格文書の作成」が、将来の税務リスクを必ずしも解消するわけではない点に留意が必要になります。
 
移転価格は、「神のみぞ知る」と言われることもあり、抽象度と専門性の高い領域です。詳細な移転価格文書作成方法やその取り扱い等については、専門家への相談を推奨いたします。

日本国税理士。2012年よりベトナム常駐で会計税務業務へ従事。ベトナム赴任前は、東京の会計事務所にて多くの外資系企業へ日本国内税務業務提供。
【AGS Accounting Co., Ltd. ハノイ市事務所】
堀切 泰孝 Horikiri Yasutaka
ハノイ市事務所
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