トナムの銀行の不良債権処理がなかなか進みません。ベトナム国家銀行(中央銀行)は2015年に3行を強制国有化、2行を特別管理下に置き、外資による買収などの再建策を模索していますが、まだ出口は見えていないようです。

今年に入って政府は、再建困難な銀行を裁判所による破産手続きで処理する方針を打ち出し、必要な法整備などを各機関に指示しています。銀行の破産は、預金者や市場への影響が大きく、日本のバブル崩壊時にも行われませんでした。

政府は銀行の破産にあたって、「預金者の利益保護と『ドミノ』効果の回避」が最優先課題であるとしています。このうち、預金者保護対策としては、全金融機関が加入を義務付けられている預金保険制度があり、今年8月に各預金者への保証額の上限が5000万VND(約22万7000円)から7500万VND(約34万円)に引き上げられました。保証額が抑えられていることに加え、外貨預金が対象外(日本でも同様)であるほか、個人名義の預金に限定されて法人名義の預金は保護の対象となっていません。

日本の預金保険では、法人名義預金も対象となるだけでなく、決済性預金(当座預金など)には保証限度額がなく全額保証されます。一方、ベトナムではそのような取り扱いがなく、企業間の資金決済への影響は免れないと思われます。

在留外国人の場合、個人名義のVND建て預金口座に多額の残高を持っているケースは、それほど多くないかもしれません。しかし、外資の現法やジョイントベンチャーはVNDで日々の取引を決済しているので、今後は自社や取引先の取引銀行の破産というリスクについて、念のためチェックすることが必要となると思われます。

小幡 葉子
Obata Yoko
TMI総合法律事務所ハノイオフィス勤務。日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。1992年より雨宮眞也法律事務所にて企業法務を担当、JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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