越の国の法律相談 No.016

カード決済が増え、不正利用も増加?

ベトナムでもカード決済の機会が急速に増えています。これにともなって、日本人の被害も発生しており、2019年2月に、ATMにキャッシュカードを置き忘れ、取り戻すまでの数分間にスキミングされた事件が発生したほか、数年前には、レストランでクレジットカードを使用した際、接客係が携帯電話のカメラでカードを撮影し、データを不正使用したケースもありました。

刑法上のカード不正使用罪は、最高で20年以下の懲役(損害額5億VND以上の場合)および罰金(2000万VND以上1億VND以下)、一定の職務への就業禁止(1年以上5年以下)、財産の没収という重い刑罰を規定していますが、実際に摘発・捜査を進めるには困難が多いものと思われます。

被害に遭わないため 予防策はある?

ベトナム国家銀行の銀行カード(キャッシュカード、クレジットカードを含む)に関する通達によれば、カード保有者が発行会社に被害発生を通知したときは、発行会社は直ちにカードを使用停止にするとともに、国内カードは5日間、国際カードは10日間以内に対策を講じる義務があるとされていますが、具体的な被害補償についての規定はありません。各カードに付帯している損害補償制度を利用するか、銀行などが販売しているカード損害保険などに加入する必要があり、お手持ちのカードの利用約款を確認することをおすすめします。

不正使用の予防策としては、ベトナムに限らず、信用できない飲食店やオンラインサイトなどで使用しない(ベトナムの人たちは、商品に満足しなければ支払わない「後払い」を徹底し、通販も代引き現金払いが主流です)、他人にカード情報を教えない、カードを厳重に管理するなどの基本的な注意事項を守るほかありません。利便性とのバランスが難しいところです。

 

日本国及びベトナム外国弁護士
小幡 葉子Obata Yoko
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