越の国の法律相談 No.027

コロナ禍で増加したフェイクニュース

ベトナムでCOVID‐19の感染が拡大し始めた2月以降、SNS上では、COVID‐19に関し、事実に反する情報・詐欺的な情報(いわゆる「フェイクニュース」)の発信・共有も増加し始め、当局も対策に乗り出しています。情報通信省は、フェイスブックやグーグルと協議し、フェイクニュースの削除とそれを発信・共有するアカウントの閉鎖を求めるよう、指示するとともに、フェイクニュースを発信・流布する者に対する監督及び措置を強化することを決定しました。

政府は、今年2月、郵便・通信及び情報通信(IT)分野における行政違反処分を規定する政令第15/2020/ND‐CP号を発布し、4月15日から施行されています。

15号政令によれば、旧政令174/2013/ND‐CP号に規定されていた組織や機関の威信、個人の名誉及び尊厳を歪曲、中傷又は損なう目的でSNS上にフェイクニュースを発信・共有する行為の他、新たに、住民に混乱を生じさせ、暴力、犯罪、社会悪、賭博を扇動し、賭博行為を提供する目的での発信・共有行為も処罰されると規定しています

芸能人の取り締まりも

実際にフェイクニュースを発信・共有した者に対する取締りも行われているようであり、影響力を有する芸能人等が罰金を科されたり(旧政令に基づく)、悪質な場合は刑法に基づき禁固刑を科されたりするケースも報道されています。

さらに、上記の刑法や政令の適用について、ハノイ市司法局は、2020年4月10日付けオフィシャルレター第925/STP‐PBGDPL号を発し、COVID‐19感染状況に関する虚偽情報、不正確な情報等をネットワーク上に掲載した場合、刑法その他の法令により、刑事罰金・行政罰金等を科されることがあるとの見解を公表しました。

このように、ある情報が事実であるかどうかを確認せずにSNSで発信・共有し、当該情報がフェイクニュースであった場合、罰金を科せられるリスクがあります。SNS上の情報発信・共有には十分気を付ける必要があります。

 

小林 亮 Kobayashi Ryo
日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスで多数の東南アジア案件を担当後、2014年4月より現職。1年のアメリカ留学を経て、2019年9月に復帰。
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