賢者の税務・会計術 vol.005

移転価格文書を構成する3本柱とは

こんにちは、AGSの辻です。今回も引き続き、移転価格税制がテーマです。

企業は関連者間取引価格(移転価格)が適正であることを説明するために、移転価格文書を作成する必要があります。もし、この移転価格文書が作成されていない場合、税務当局の推定による更生を受ける可能性が高くなるため、文書作成は非常に重要な意味を持ちます。

移転価格文書は経済協力開発機構(OECD)の要求事項に基づき、以下3種で構成されます。
①マスターファイル
②ローカルファイル
③国別報告書

文書はベトナム語での作成が必要

以下でそれぞれの移転価格文書の概要を見ていきましょう。

①マスターファイルとは、多国籍企業グループの全体像を説明する資料を指します。例えば、グループの組織構造や、事業概要等の情報が記されます。
このマスターファイルは原則的には究極の親会社が作成するべきものです。しかし、実務的には日本側で日本の法令に基づき、作成が免除されている場合があります。
また、ベトナムではベトナム語に翻訳することが求められるため、ベトナム現地法人が現地会計事務所に作成を依頼することもあります。

②ローカルファイルとは、各関連者間取引の詳細を説明する資料です。例えば、対象企業の経営構造や、移転価格算定手法等が記されます。
このローカルファイルはベトナム側で作成されるべきものであり、対税務当局において最も重要な意味を持ちます。

③国別報告書とは、多国籍企業の各国での収入や納税額、資本額、従業員数等を定められた様式に記入し、原則、究極の親会社が作成することになります。
ただし、移転価格文書作成には免除規定が設けられており、作成が免除されるケースがあります。こちらは、次回ご案内します。

辻 雄太
米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
A. I. Global Sun Partners JSC
ホーチミン市事務所
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