人間には直感や感情的な連想に基づく「ファスト(Fast)思考」と、注意深く合理的な「スロー(Slow)思考」があると前回お伝えしました。

7種類ある非生産的なファスト思考の①「勝手な決定・最初に答えありき」に続き、次の2つをお伝えします。

②勝手な決定
「レッテル貼り」

「他者がこう考えている」「他者が『私がこう考えている』と思っている」という思考です。

例えば、「私がプレゼンテーションをしているのに、みんなしっかり聞いていない。私をバカにしているからだ」。あるいは、「上司から仕事上で厳しく指導された。私に厳しいのは、私が嫌いだからだろう」。

相手から「こう見られている」と、自分に対して勝手な見方をつくり上げてしまうファスト思考のことです。

③ネガティブの増幅
「永遠の不幸」

「ネガティブな出来事は変えられず、コントロールもできない」という思考です。

アポイントのために電話したが10件も断られた。これからもずっと断られ続けるだろう。自分が何をしてもこの状況は変わらない。そんな無力感を引き起こします。

皆さん、「学習性無力感」をご存知ですか?  セリグマンとマイヤーの実験で、毛布に包んだ犬に電気ショックを与え続けると、逃げられるのに逃げなくなったというものです。回避できない電気ショックを経験し、自分には止められない(無力である)と学習してしまったのです。

「無力感を学習する」のは人間も同様です。身体だけでなく、心理的な嫌悪刺激が無気力状態を引き起こします。

否定的な言葉や態度、理解できないのに繰り返される強制活動。それに対して「暴力的な態度行動」や「逃げる」手段をとっても押さえつけると、回避できないと学習し、セリグマンのイヌのような無力感に陥るのです。

一見、従順そうでも、無力感に襲われている可能性があります。「学習性無力感」を獲得すると、挑戦しない、新しいことを学習しないなど、心理的に不安定になります。

そんな部下がいらっしゃるなら、学習性無力感を獲得してしまっているかもしれません。

知識 大輔 Chishiki Daisuke
日本で営業責任者を務めた後、BConChinaで5年間、董事長総経理を経験。2020年8月から董事長兼BConベトナムゼネラルダイレクター就任。
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