賢者の税務・会計術 vol.042

こんにちは。AGSアカウンティングの堀切です。「堅苦しい税制を、少しでも身近なものへ」をテーマに、本稿では、所得税の現物給付について考察をします。

「ベトナムでは住宅家賃も所得税の対象になる」という定番フレーズに違和感を覚える方は、ぜひ最後までご一読ください。

住宅家賃は
給与と見なされる

日本・ベトナムを問わず、個人所得税法の「給与」は金銭給与のみならず、一定の現物やその他の経済的利益による給付も含むとされています。
 
会社が住宅家賃を負担している場合は、非課税所得に該当しない限り、その住宅家賃を現物給付した給与として所得税計算をするのが原則です。
 
日本では、通勤定期代や社宅費用、その他の各種の現物給付が非課税所得とされています。
 
ベトナムでも、各種の現物給付が非課税所得とされており、住宅家賃もその一種であると考えられます。

課税対象額は
総所得の15%まで

ベトナム所得税法によると、「現物給付である住宅家賃の実際金額と、家賃額を除く総所得の15%とを比較し、いずれか低い金額を課税所得に加算とする」と定めています。つまり、「実際家賃金額は原則として所得税課税されるものの、総所得の15%を限度として課税する」と理解することができます。
 
他方、日本の所得税法では、会社が従業員に貸し与える社宅費用のうち、法令で定める一定金額以上を従業員個人が負担をしている場合に限り、会社負担金額が非課税になると定めています。
 
両者を比較すると、限度額計算により一定割合を超えた部分を非課税とするベトナムと、従業員本人が最低限度の自己負担をしているか否かに着目する日本との、相違点が理解できます。
 
このように法令や実態の差異に着目して考察すると、住宅家賃と出張時のホテル費用、通常の住宅家賃とコロナ禍で入国時の隔離ホテル、及び、工場付近のホテル等の費用を会社が負担した場合の所得税の取り扱いについても理解を深められます。
 
次回は、新型コロナウィルス関連費用に関する個人所得税法上の取り扱いを解説します。

日本国税理士。2012年よりベトナム常駐で会計税務業務へ従事。ベトナム赴任前は、東京の会計事務所にて多くの外資系企業へ日本国内税務業務提供。
【AGS Accounting Co., Ltd. ハノイ市事務所】
堀切 泰孝 Horikiri Yasutaka
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