越の国の法律相談 No.045

近年目覚ましく成長している電子商取引(EC)分野。新型コロナの感染拡大による移動制限等の規制で、必要不可欠な生活ツールと再認識された方も多いのではないでしょうか。
 
今回は、個人事業主であるEC店舗出店者(以下、EC個人出店者)からの税収確保の法的枠組みとして考案された、ECプラットフォーム所有者への適用措置を紹介します。

プラットフォームが
税金を申告・納税

ベトナム政府は従前より、EC個人出店者からの税収確保を1つの課題としていました。財務省は2021年6月、EC個人出店者も付加価値税及び個人所得税の納税義務者であることを明確化した通達を公布しました。
 
同通達によると、ECプラットフォーム所有者が、EC個人出店者の代わりに税務申告及び納税を実施することで、EC個人出店者の税務申告・納税義務が履行されるとしました。
 
ただし、EC個人出店者とECプラットフォーム所有者との間の課税関係がどのように処理されるかは、現段階では明らかではありません。
 
納税額はEC個人出店者の収入に基づき徴収され、税率は事業分野によって異なります。たとえば、商品販売については付加価値税1%、個人所得税0.5%です。ただし、年間売上高が1億VNDを超えない場合、付加価値税及び個人所得税の納税が不要とされます。

措置開始の
導入時期は流動的

上記の通達自体は2021年8月1日に施行されましたが、ECプラットフォーム所有者への適用措置は税務当局のロードマップに従い導入されます。本稿執筆時点では当該措置は開始しておらず、導入時期は流動的です。
 
ただし、導入までの間は、ECプラットフォーム所有者は税務当局の要求に応じ、EC個人出店者の事業活動に関する情報(氏名、住所、電話番号、Eメールアドレス、納税者番号、身分証明書番号、提供商品/サービス、収入、口座番号その他関連する情報)の提供が義務付けられています。
 
ECプラットフォーム所有者を中心に反対の声も大きく、ロードマップ策定中に何らか変更される可能性もあるため、今後の状況を見守る必要がありそうです。

 

小林 亮 Kobayashi Ryo

日本国/NY州弁護士・ベトナム外国弁護士。東京オフィスで多数の東南アジア案件を担当後、2014年4月よりホーチミン市オフィス駐在。1年のアメリカ留学を経て、2019年9月に復帰。

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