越の国の法律相談 No.002

マルチ商法規制違反罪が新設

2018年1月1日から、新しい刑法が施行されています。当初は2016年7月1日から施行されるはずでしたが、
延期になり、2017年に一部改正された上でようやく施行の運びとなりました。

改正点の一つとして、マルチ商法規制違反罪が新設されているのでご紹介します。

ベトナムでは、マルチレベルマーケティング(マルチ商法)の行き過ぎを押えるため、
2004年に競争法とその施行政令により、保証金10億VNDを供託してライセンスを発行された業者のみが営
業を許され、違法営業に対しては行政罰金500万から1億VNDなどの制裁が科されていました。

その後、違法営業による被害が後を絶たず、規制強化を図るために、2014年からは、保証金が50億VNDに
引き上げられたほか、最低資本金100億VNDの条件が追加されました。

また、複数の省・中央直轄市で違法営業した場合には、行政罰金額は2倍に設定されました。

さらに、2017年改正刑法によって刑法上の犯罪として罰金(5億から50億VND)のほか、
懲役刑(被害の程度などによって6ヶ月から5年)の言い渡しも可能となりました。

ウェブ上の違法営業は改正により削除に

当初、新刑法にはウェブ上での違法サービス営業罪(無許可のeコマース取引所、マルチ商法、決済仲介、
オンラインゲームなど)が設けられていました。

しかし、スタートアップ企業を萎縮させてしまう影響が考えられるという理由から2017年の改正で削除され、
違法マルチ商法だけが独立の犯罪として新設されました。

削除されたその他の違法サービスについては、結果的に行政処分による罰金のみが科され、
刑法上の処罰の対象とはなっていません。

違法マルチ商法の摘発が、新刑法のもとでどのように展開されるか注目されます。

 

 

小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援
長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
TMI総合法律事務所Hanoi Office
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