ベトナム最大級の人材紹介サービス「Navigos Search」と求人サイト「VietnamWorks」を持つNavigos Group。親会社は2013 年に同社を買収した日本のエン・ジャパンだ。そのトップが来越し、ベトナムの戦略を語った。

ジャパンデスクを開設


代表取締役社長 鈴木孝二

―― Navigos Group をグループ化して3年ですね

鈴木 Navigos Group は求人サイトを運営しているVietnamWorks と人材紹介を運営しているNavigosSearch から成るものですが、この3年でグループ全体の従業員数は約250人から約420人に増え、売上げは約2倍となりました。事業と企業規模が共に拡大しています。

また、人材紹介サービスを提供するNavigos Search には今年から日本人マネジャーを日本から赴任させ、日系企業に特化した人材紹介サービス部門の「ジャパンデスク」を開設しました。Navigos Search はアジア太平洋地域で管理職やスペシャリストの人材紹介を行っているエングループの一員であり、ジャパンデスクはタイ、韓国、シンガポールなどにもあります。国をまたいだ、国際的な人材の流動も可能になります。

―― 管理職やスペシャリストと言いますと?

鈴木 管理職はマネジャーやダイレクター、専門家はITエンジニアやマーケター、人事や財務経理も多いですね。Navigos Search には2003 年からの求職者データベースがあり、登録者からのご紹介も多いので、ハイクラスの人材が豊富です。現在、データベースには約 14万人が登録しており、約 70% がベトナムの様々な業界・分野で、10年以上の勤務経験がある方々です。

―― 日系企業への人材紹介サービスを強化する理由は何でしょう?

鈴木 日本企業からベトナムへの投資は増加中で、東南アジア諸国に投資する場合に最初に選択する国と言われています。加えて、今後は輸出用の生産拠点だけでなく、国内市場に向けた様々な業態の進出が見込まれます。例えば、ベトナム人の嗜好に合わせた商品開発をしようと思えば、R&D拠点の設立も視野に入るわけです。

また、平均28 歳という若い労働力は必要なスキルを身に付け始めた段階で、今後はマネジメント層が大量に求められるはずです。多様な分野でのスキルの高い人材ニーズが増えれば、我々が得意とするフィールドが広がりますし、経済成長に加えて今後はTPP も追い風になるでしょう。

そんな国でシェアトップ級のグループ企業を持つのは得難いチャンスであり、ぜひ事業を拡大させたいと思います。一方、人材紹介という業態が確立されていない若い市場なので、ある程度の投資期間は必要と考えます。

―― 企業へのアプローチで心掛けていることとは?

鈴木 ベトナムに限ったことではありませんが、「常にパートナーとしての視点を持つ」ことです。時には聞きたくないことも言うのが本当のパートナー。例えば、企業の人材ニーズは大抵限定的で短期的ですが、中長期的に必要な、潜在化された人材を提案するのも仕事だと思います。難しくはありますが、そこまでのソリューションを提供したいですね。

日系企業も変わるべき

Navigos Search の社内

Navigos Group の14 周年記念写真(ハノイ事務所のスタッフ)

―― 日系企業へのアドバイスを。

鈴木 日本ブランドは非常に高品質な製品・サービスと連想されていますから、ベトナム人は日系企業に対する自分なりの理解や知識を持っていると思います。一方、日系企業には日本での物差しやルールに固執するケースが多くあります。企業としての理念や信念は変えずとも、進出国へ柔軟に合わせる姿勢は必要でしょうし、国際的な成功企業はそのバランスが絶妙なのだと思います。

弊害の一つが日本語のできる人材を求めすぎることで、世界的に特殊な例だと気付くべきです。英語を解するベトナム人は多いので、英語でコミュニケーションを取ろうと思えば候補者はかなり広がります。また、語学ができる人とビジネスができる人が違うことも知るべきです。

転職が一般的なベトナムですが、私は「ベトナム人はお金だけで動かない」と感じています。実際、VietnamWorksが登録者約1万2600人から回答を得たアンケート結果(2015年実施)では、転職理由の1位が「昇格や自己開発のチャンスがない」でした。そこで日系企業の強みになるのは、ローカルや他の外資系企業が投資をしない、研修などの充実したトレーニング制度です。

―― 今後目指すサービス像とは?

鈴木 入社した企業で活躍する「入社後活躍」人材を、グローバルで増やしたいですね。弊社はご支援をした方がその企業で活躍・定着することを、サービスのゴールと設定しています。一般的な人材紹介会社は求職者の入社までが仕事で、ともすると転職を繰り返す方が増えたほうが利益の上がる構造になっています。人材が定着しない企業は発展が遅れ、働く方にとっても不幸です。

特にアジア市場では、1つの会社に長く勤める習慣がないので難しいかもしれませんが、「入社後活躍」の視点には企業も求職者も「ノー」とは言いません。「エン・グループ」でグローバルに実現したいと思います。

en-japan inc. / en world Japan K.K
President 鈴木孝二

1971 年生まれ。大学卒業後にエン・ジャパンの前身である株式会社日本ブレーンセンターに入社。2000 年にデジタルメディア事業部が分社独立してエン・ジャパン株式会社設立と同時に取締役に就任。2008 年に代表取締役社長に就任。2010 年よりエンワールド・ジャパン株式会社の取締役に就任し、2016 年3 月からアジア太平洋地域で管理職・スペシャリストの人材紹介に特化するグループ会社である、エンワールド・ジャパン株式会社の代表取締役社長も兼任。