全世界のマブチに貢献できるベトナム人を
マブチモーター vol.13
ビエンホアにあるベトナムマブチの工場はグループ内最大級であり、マブチモーターの製品の全生産数のうち約33%を生産する。生産個数は右肩上がりに上昇し、2015年は年間約5億個を見込む。
今村社長が成長の過程を語る。
マブチ最大の生産工場 圧倒的な世界シェア
―― どんな製品を作っていますか?
今村 主力は自動車のドアミラー用とドアロック用の小型モーターで、前者は世界シェアが約8割、後者は約7割です。他には音響機器用の小型モーターもありますが、車載用のCDプレイヤーに使われるものですので、車載用途が約95%となっています。
―― なぜそれだけのシェアを得られるのでしょう。
今村 自動車の不備は人命にかかわるため、メーカーさんは品質管理の基準が厳しく、PPM(part per million)、つまり、100万個に1個レベル以下の不良率、品質管理のレベルが求められます。加えて、大量・安定供給かつ低コストを実現しなければいけません。
マブチモーターは小型モーターに特化した開発・生産の歴史が長く、「標準化戦略」で少品種大量生産を続けてきたので、これらが評価されているのだと思います。私たちはお客様に合わせて多品種を作るのではなく、自社でいくつかの標準的な形を決めて、お客様に販売しています。
この工場では基本的に4タイプのモーターを生産しており、本年度はこれらの総数で約5億個を見込んでいます。
―― ベトナムには1996年に進出されていますね。
今村 はい。マブチモーターの海外生産の歴史は古く、最初は中国や台湾に進出しました。ただ、当初は手作業が多くて労働集約型だったため、人件費などのコストダウンとリスク回避などを目的に、ベトナムに進出したのです。2005年にはダナンにも工場を竣工し(ダナンマブチ)、プリンター用の小型モーターを中心に生産しています。
ベトナムマブチは世界に12あるマブチモーターの生産拠点の中で、最も生産個数が多くて全体の約33%を占め、ダナンマブチと合わせると50%弱になります。
―― 業績は好調でも従業員数は減っているとか。
今村 上昇する人件費への抑制と、工場内の自動化や機械化を進めたためにそうなりました。2011年頃は約9000人の従業員がいましたが、現在(2015年7月)では5000人弱です。
また、工場内の製造設備は自社で設計、加工、製作をしています。簡単なものは外注に出す場合もあり、プラスチックの射出成型などには専用の設備を購入しますが、主なモーター部品の製造設備は、自社のベトナム人エンジニアが設計・製作を担当します。
ただ、これは低コスト化が目的というより、生産現場の声を聞きながら最適なものが作れるのと、技術ノウハウ漏えい防止などが目的です。そのため、マシニングセンタなど数千万円単位の工作機械も揃えており、金属加工メーカーさんに負けないほどです(笑)。
―― こうした装置の評判はどうですか?
今村 全社的にも高い評価を得ています。ベトナム人は創意工夫が好きで、発想力のレベルが高い。また、マニアックなほど細かい点にもこだわります。設備のクオリティが高いので、ダナンや中国の工場向け設備も設計・製作し、販売しています。
定着率向上への工夫 現地化を進めたい
―― 社長として心掛けていることは何でしょう?
今村 色々ですが、特に労務管理です。2010年頃は月に100~200人、ワーカーの3~4%が退職していましたが、現在の退職者は月に20~30人です。先ほどお話ししました従業員の全体的な減少は、こうした退職者の自然減によるものです。
当時は好調だったベトナムの景気が今はそれほどでもない、という理由もあるでしょうが、弊社では公平な人事評価に加え、福利厚生やイベント活動などに力を入れています。各種の授賞式や記念日の祝典、スポーツ大会や社員旅行などです。
従業員数が多いので、社員旅行は数回に分けていますが、それでも1000人以上が何台かのバスで移動します。こうしたこともあってか、従業員の平均勤続年数は9年超です。
―― 今後はどのようなことを考えていますか?
今村 マブチモーターには、「国際社会への貢献とその継続的拡大」という経営理念があります。そこで進めたいのが現地化です。
弊社は課長クラスの30人弱はすべてベトナム人ですし、今はダナンマブチの副社長をしている元工場長もベトナム人です。
将来的には弊社の社長をベトナム人にしたいと思っていますし、メキシコで建設中の新工場立ち上げにも、ベトナム人スタッフを参画出来るレベルに引き上げたいです。来年はベトナムに進出して20周年になります。全世界にマブチのベトナム人が貢献できるようにしたいですね。
MABUCHI MOTOR VIETNAM LTD.
General Director 社長 今村知文
1973年生まれ。大学卒業後に総合電機メーカーに入社。その後経営戦略コンサルティングファームに転職。2008年にマブチモーター入社し、2010年11月に副社長としてベトナムに赴任。2012年4月より現職。
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