家安全委員会の発表によると、ベトナムで2014年に交通事故で亡くなった方は8996人、負傷者は2万4417人。同年の日本の交通事故死亡者数は4113人でしたから、実数で日本の約2倍、人口当たりの数では約3倍に上ります。

もし事故に遭ってしまったら、まず警察「113」、救急「115」に電話し、次に加害者の逃亡を阻止し、名前と連絡先を確かめることが大切です。ベトナム語のできる知人を電話で呼び出し、または周囲の人に助けを求めましょう。また、交通警察への被害届が必要ですが、英語を話す警察官はほとんどいないので、ベトナム語通訳の同行を要求されます。

民法では、被害者は加害者に対し、治療のための合理的費用、けがによる収入減少分、看護費用・看護した人の収入減少分の損害賠償を求めることができるほか、慰謝料として、原則として当事者が合意した額、合意に至らない場合は地域別最低賃金の30ヶ月分(死亡慰謝料はその2倍)を請求できます。なお、ハノイとホーチミン市の30ヶ月分の最低賃金は、現在9300万VND(約52万円)です。

ただ実際には、加害者が保険に加入していなければ、まとまった賠償額を受け取ることは難しく、自賠責強制保険への加入率が自動車約で90%、バイクに至っては約20%にとどまる上に、保険限度額も対人7000万VND(約39万円)、対物は自動車7000万VND・バイク4000万VND(約22万円)と低額で、任意保険はほとんど普及していないのが実情です。

このほか、加害者が刑事被告人として裁判を受ける場合には、被害者は刑事訴訟に参加し、損害賠償の支払いを命じる民事判決を受けることができます。

何はともあれ、今日もお気をつけて!

小幡 葉子
Obata Yoko
TMI総合法律事務所ハノイオフィス勤務。日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。1992年より雨宮眞也法律事務所にて企業法務を担当、JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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