年間30%の成長で伸び、2016年は20億ドル規模に達したと言われるベトナムの化粧品市場。その9割が海外ブランドという特徴を持ち、女性の化粧意識の高まりや収入増に合わせて、商品数も参入企業も激増している。市場動向と各社の戦略について、日、韓、越、英の有名ブランドに取材した。

 

韓国の化粧品ブランドTHEFACESHOPの独占代理店として、2005年に設立されたVIET LOTUS。この12年で、中級化粧品市場でのシェアトップ級になったという。急成長の理由を「戦略」と「店舗スタッフ」と語る。

シェア拡大の理由は 戦略とスタッフ教育

「ナチュラル・コスメ」で知られる韓国ブランド、THEFACESHOPの1号店がオープンしたのは2006年。現在では全国66店舗に広げ(2017年7月現在)、売上は毎年20~30%伸びているという。

「この成長率はベトナムの化粧品市場の伸び率とほぼ同じです。毎年のように新ブランドが参入して競争が激しくなる中で、市場の成長と同率とは、実際的にそれを上回っていると考えています」

メインターゲットは19歳以上の大学生や新卒者などの若者層。収入の10~20%を化粧品に使うと仮定すると、月収が800万~2000万VNDの人になるという。そのため商品価格は手頃な3万VNDから200万VNDの高級品まで幅広く、種類も豊富で商品数は40~50ライン、商品の種類は合計約800だ。

YEHWADAM

Collagen Ampoule Lipstick

人気商品をいくつか紹介すると、ディズニーとコラボした「Cushion Foundation」。ディズニーキャラのケースが複数タイプある、15~25歳の若者向けのファンデーションだ。高級ラインの「YEHWADAM」は化粧水、美容液、乳液、クリーム、アイクリームの5つが揃った、アジア向け商品ライン。今年初めに発売し、30歳以下と30歳以上に向けた2種類がある。

また、5月末に発売したのが、薬用効果のあるスキンケア化粧品「Dr. Belmeur」だ。

「化粧品を初めて使う人もおり、そうした方は特に安全性と肌の大切さを気にしています。この商品はそんな初心者と敏感肌の女性が対象です。肌では若者は美白、35歳以上の方は艶、張り、健康に意識が高いですね」

コラーゲンが入った口紅「Collagen Ampoule Lipstick」は発売1ヶ月で数千個が売れた商品。ゴールドのケースは高級感があり、コラーゲンによる保湿と引締めの効果があるという。価格は少々高めなので、収入のある大人の女性が購入するとか。

このようなヒット商品もあり、THEFACESHOPは中級化粧品市場でシェアトップ、高級品などを含めた全化粧品市場でもトップ5に入ると同社では考えている。

急成長を遂げた理由は2つあり、1つは戦略、もうひとつは洗練された店舗スタッフだという。

「主な戦略は、メインの顧客を明確にしてそのニーズに応えたこと、メンバーシップ制度を導入してPLATINUM、GOLD、SILVER、BRONZEでそれぞれに特典を付けたこと、ベトナムにマッチした商品の選び方を大切にしたことなどです」

また、ターゲットはデジタルに敏感な若者なので、オンラインマーケティングを取り入れ、WebサイトでのPRやプロモーション、EC販売などを拡大させた。これらは既に顧客との大事なチャネルとなっているそうだ。

もうひとつのカギである店舗スタッフの数は全国に約320人。来店客へのコンサルタントも兼ねており、そのモットーは「ワンダフルサービス」。店内では日系製造業で著名な「5S」を徹底させ、常に清潔さをキープ。また、顧客の来店時の挨拶、コンサルティング、販売までのプロセスにはルールがあり、徹底させているという。

「ベトナムでは若者を中心に『韓流』が流行っており、ファッション、音楽、ドラマなどがブームです。韓国人気もTHEFACESHOPへの大きな追い風になったと思います」

広さと深さで変化 ベトナム化粧品市場

Mr. Voは、ベトナムの化粧品市場について、「広さ」と「深さ」の両方向で進化していると語る。

広さとは、地域、年齢、商品の種類だ。地域で言えば、以前の購買層は都市部の女性がほとんどだったが、今は地方の農村部の女性にも広がっている。

Dr. Belmeur

年齢も、以前は若いOLが中心だったが、15歳から70歳までと幅広い女性にニーズが生まれている。
「男性ユーザーも増えていますよ。私はメイクはしないけど(笑)、スキンケアはしています。テニスなど屋外スポーツの後、焼けた肌にローションを付けるなどです」

商品の種類では、以前はスキンケアなら洗顔フォームとクリーム、メイクならファンデーションと口紅くらいだったが、今ではスキンケアならメイク落とし、洗顔、化粧水、美容液(2~3種類)、乳液、クリーム、サンクリーム、アイクリームなどで計8~9種類にもなっている。基礎的な商品数が大幅に増加しているわけだ。

一方の深さとはニーズの多様化。同じ種類の商品でもファッションや個性、TPOに合わせて使い分けたり、見た目の色合いや効果だけでなく原材料や成分なども厳しくチェックされている。特に化学成分の入ったものは人気がないという。

「弊社は中級市場で2位と3位に大きく差をつけており、最大のライバルは自社と思っています。そのため、常に新しいことをして競合との差を広げたい。これからは深さと広さをより展開させ、店舗数を2020年までに100店舗にし、各店舗の収益とクオリティを上げていきます」