中間・富裕層が増加する中で、子どもに投資する親が増えている。玩具や服などのモノから、塾や習い事などの教育系、エンタメ施設まで市場は多彩で、ニーズ拡大は必至とみられる。膨張するキッズ市場を追った。

 

1995年に進出し、初の自社工場を翌年ベトナムに竣工したプラスベトナムインダストリアル。2007年から国内市場に本格展開し、2014年からは「スクールプロダクト」で中高生向けに注力。多彩な手法でブランドアップを狙う。

O E Mで新商品中高生に認知度を

ベトナムに3つの工場を持つプラスベトナムインダストリアル(以下プラスベトナム)。当初はマザー工場としての輸出拠点だったが、2007年から本格的に国内市場に参入。2014年にはマーケティングチームを作り、学生を対象に市場調査を開始した。小、中、高、大の学生を調べた結果、「都市部の中高生」にターゲットを絞る。しかし、学生に聞いた「文具10傑」に同社の商品はなかった。

「ノート、鉛筆、消しゴムなどの筆記具が半数、他はコンパスや定規などで修正ペンが9位くらい。我々が販売したい修正テープや修正のり、ハサミは入っていませんでした」

中学校でのサンプリングの様子

書店でのイベント

ブックフェアへの出展

そこでまずは認知度を高める戦略を取る。2016年から自社商品でないノート、鉛筆、消しゴムを専門業者にOEM委託し、商品というより販促品として販売したのだ。ノートにはヒット商品であるデコレーションテープ「Deco Rush」のキャラクターを展開し、鉛筆は木の地を活かした高品質とするなど、「安全・安心」、「シンプル」、「ユニーク」をテーマに開発。販売方法もノート10冊にDeco Rushを1つプレゼント、鉛筆3本と消しゴム1個をセット販売するなど、お得感を打ち出した。

「2015年から社内に開発チームを新設して、ベトナム人にマッチした商品開発をしています。特に弊社で『スクールプロダクト』と呼ぶ、中高生向けの文具が対象です」

同社の開発には、日本製品の①パッケージを変える、②色や仕様を変える、③機能を省く・パーツを変える、④ベトナムで一から開発する、の4段階があり、③と④を担うのが開発チームだ。また、2015年からは全ての製品で青、黄、緑、ピンクのハッピーカラーと、白と黒のモノトーンの計6色を揃えるように展開している。

「ベトナムに合わせた開発は、ディーラー(小規模の問屋)や小売店の販売員からの評判が上々です。彼らの意見がとても参考になるのです」

イベントにも積極的近代流通を拡大

この「認知度向上作戦」では各種の販促イベントも顕著だ。春と秋には、代理店とお客を招いての展示会を、ハノイとホーチミン市を中心にダナンやメコンデルタで開催中。新商品を発表するセミナーと、代理店向けの展示即売会を行うのだが、大きな会場では200人が集まることもあるという。

中学と高校には、サンプリングとして修正テープと修正のりを無料配布している。昨年は修正テープを60校、修正のりを5校ほどに配ったのだが、全校生徒にではなく、5人に1人くらいに渡るようにしている。例えば、生徒数が2000~2400人なら商品を400個とバウチャーを1000枚だ。

「弊社の商品は使ってもらわないと良さがわからない。そこでまず使ってもらい、友達が使っているのを見て欲しくなってもらう。バウチャーは修正テープ本体を買うと交換用リフィールがもらえるなどで、これで購入していただけたらと思います。購入先となる近くの文具店などにスタッフが出向き、ディスプレイを設置しています」

6~9月は主要書店を中心にデモ販売を開催。ラッキードロー盤を用意し、購入者には外れなしで商品をプレゼント。各地のブックフェアにもブースを出展し、ダーツが当たれば商品を渡す。これらは学生と一緒に来場する、親に向けてのアピールもあるという。

元々はB to B型でのオフィス市場が強く、ベトナムでは修正テープ、ホチキス・針、レバーアーチファイル、クリアファイルなどが売れ筋だという。そんな同社がB to Cの学生市場に注力して約3年。最近では引合いも増え、現在はオフィス向けが93%、学生向けが7%と徐々に成果が表れている。今後もスクールプロダクトの割合を増やし、併せて家庭向け販売も始める予定だ。

また、販売ルートは文具店や雑貨店などの伝統流通が95%、スーパーマーケットなどの近代流通が5%だが、近年のスーパーの進出増もあって今後は近代流通の割合を増やしたいという。三原氏はベトナムの学生全般に「文具のブランド」が認知されていないのは、伝統流通が主体だからと考えている。

「雑貨店では店主から商品が手渡されますが、スーパーでは並んだ商品からユーザーが自由に選べます。これで差別化やブランド認知が始まると思うのです。弊社にもこれからがチャンスです」

同社の国内販売は毎年2ケタ成長を持続しており、順調に規模を拡大している。日本本社はベトナムを主要拠点と考えており、今後はベトナムからアジア諸国に販路を広げ、その後は世界展開を進める計画だ。