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成長期に入った小売市場で、日系企業が躍進している。コンビニやスーパーなど近代流通がベトナムに根付き始め、消費者のライフスタイルも変えようとしている。他の外資系企業や、地場小売業を押さえて勝つ秘訣は何か。独自の展開を続ける3企業のトップが語る。

 
 

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2009年に日系コンビニとして初めてベトナムに進出したファミリーマート。ホーチミン市内に42店舗を展開するが、合弁先の企業が買収されて事業を精算。しかし、2013年に再出発を図り、2016年9月末現在で114店舗と進撃を続けている。

新パートナーと契約を締結

「私は2013年4月に赴任しましたが、その時は前のパートナー企業と事業の精算中でした。ですが、その年の7月には、新1号店を再開。その後順調に店舗を増やし、2024年での2000店舗を目指しています」

当座は独資でのスタートとなったが、新しいパートナー企業を探し続け、2016年2月に地場のVietnam Investment Development Group(VIDグループ)と合弁契約を結んだ。VIDグループは銀行業、不動産業、小売業などに幅広く展開しており、特に地域密着型の小売業が事業を成長させるには、地場企業との連携が不可欠と考えている。

ベトナムのコンビニには「Circle K」(米)や「Shop & Go」(シンガポール)、日系の「ミニストップ」など外資系の他、地場では不動産業などを幅広く展開するビングループのミニスーパー「VinMart+」が店舗数を増やし、2017年には7-Elevenの進出が計画されている。コンビニの認知がようやく始まった段階であり、本格的な市場拡大が確実視されている。

5今年6月にバリアブンタウ省に初出店したホアンホアタン店

「それでも人口当たりの店舗数はまだ少なく、出店余力は今の10倍はあるでしょう。将来は、ベトナムでナンバーワンになるつもりです」

現在はホーチミン市を中心に出店しており、ビンズオン省に3店舗、バリアブンタウ省に3店舗がある(2016年10月現在)。

今後はホーチミン市の中心部はもとより、2区、7区、ビンタン区などへ展開し、来年にはハノイに北部1号店を出店する予定だ。ハノイは夜間人口が少ない、夜間に人の集まる場所が少ない、家賃が高めなどの理由で市場としては厳しいが、徐々に変わりつつあるという。

一方、他社にも言えることだが、バンコク、マニラ、クアラルンプールなどコンビニが根付いた都市のような「儲かる仕組み」が、優良地域のホーチミン市でもできていないという。大きな理由は家賃などコストの割には購買意欲がまだ低いことだが、改善されていくことは間違いない。

人気商品は中食とカップ麺

現在のファミリーマートベトナムは全てが直営店だが、来年にも本来のフランチャイズ事業を進めていく予定だ。ただ、その前には2つのハードルがあり、ひとつはフランチャイズのオーナー(フランチャイジー)が加盟したくなる実績を作っていくこと。もうひとつは、ベトナム用のフランチャイズパッケージの作成だ。

加盟店は本部が設定した価格や条件でベンダーから商品を購入して、顧客に販売する。日本では本部が加盟店の売上を預かり、ベンダーに支払い、一定率のロイヤリティを受け取って、加盟店に利益を渡す。これをベトナムで行うには、金融のライセンスが必要になるそうだ。

「フランチャイズは各国の法規制に対応させています。現在は台湾でのフランチャイズ方式を考えており、来年には実現しそうです」

6ファミリーマートの店内の様子

ベトナムのファミリーマートと言えば、ベトナム人なら誰もが知る「ドラえもん」を使った各種商品が人気だが、これは「日本のコンビニ」をアピールする目的があるという。ただし、いくら「日本製」の信頼が高くてもそれだけでなはなく、主要顧客であるベトナム人が喜ぶもの、彼らに買ってもらえるものを揃えている。

その顧客のニーズで意外だったのは、既に売れ筋商品となっている、おにぎりやサンドイッチといった「中食」だという。

「ASEAN諸国で中食のニーズがきちんとある国は珍しく、例えばタイでは市場が小さく、売れ筋も少ないのです。米やパンを食べる習慣があるのと、特にホーチミン市では働く女性が多いことが理由ではないでしょうか。日本でも女性の就業率が上がると、コンビニの売上が増えるというデータがあります」

カップ麺も人気商品だ。ベトナムの即席麺市場のほとんどは袋麺だが、同社ではカップ麺のほうが売上が高いという。カップ麺は日本のものに比べて具材が少ないせいか、その場で一緒におでんを購入して、イートイン席(店内で飲食できる席)で食べる人も多いそうだ。

今後については店舗数を増やすだけでなく、店のコンセプトをきちんと築きたいという。ベトナムでのコンビニは普及期に入ったばかりなので、各店の違いを意識する人は多くない。その中でブランディングを確立したいというのだ。

「これからは『ファミマに行きたい』と思われる店、お客様に選ばれる店にしたいです。それと、どこの店舗に行ってもすぐ『ファミマ』とわかるようにも。そのための店作りを、ぶれずに続けていきます」