回は、2016年7月より施行されている付加価値税法等の改正法106/2016/QH13から、VAT(付加価値税)還付について解説させていただきます。前回の続きのCIT優遇は次回に掲載いたします。法令の主な改正点は、①原則的な取扱いにおけるVAT還付の削除、②還付可能な場合における新たな要件の付与、となります。

最初に原則的な取扱いの変更ですが、これまでは、VAT計算方法について控除法(仮受VATから仮払VATを控除して納税額を計算する方法)を選択しており、差額が仮払VATの残高となった場合、一定の条件のもとで還付が選択可能でした(法31/2013/QH第1条7項)。しかし今回の改正により、このような仮払VATの残高は次期に繰越し可能となるものの、原則としてVAT還付の選択は不可となりました。なお、法令に加え、財務省によるオフィシャルレター10315/BTC-TCT/BTCでは、2016年6月期以前の還付については各当局で手続きを進めることを確認しており、法令が施行される7月以降については、原則VAT還付不可であることを追認しています。改正の影響により、国内の赤字販売から生じた仮受VATの残高は、還付の選択ができなくなったことに注意してください。

次に、還付可能な場合に新たな条件が付与されました。これまでと同様、新規投資による固定資産の購入や輸出取引から仮払VATの残高が生じた場合、一定の条件のもとでVAT還付が認められます。ただし、新規投資時には資本金の全額払込み、輸出時には関税法への準拠といった、新たな条件が付与されました。

今回の法改正から、今後のVAT還付はますます困難になることが懸念されています。そのため、未控除の仮払VAT残高がある場合には、早めの対応をお勧めいたします。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
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