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技術や営業など「本業」が優先される結果、日系企業の「人事部」は機能不全の状態だ。仕方がないかもしれないけれど、それでいいのか? 採用、評価、給与、リテンション、組織作りまで、人事は全ての事業の根幹だ。今一度、人事の仕事を真剣に考えるため、現状の課題と解決策を各業界のプロに尋ねた。

 
 

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専門職やマネジメント職に特化した人材紹介会社のJAC Recruitment Vietnam。ベトナム人の募集から入社後のフォローまで、一般的な採用フローに沿って各段階での内容とチェックポイントを語る。

 

人材募集の4手法

ベトナム人の採用には主に転職サイト、人材紹介会社、社員の紹介、自社募集といった方法があるが、それぞれにメリットとデメリットがある。

転職サイトは費用が安めで、色々な人が応募するので応募者が多く集まりやすい。ただ、選別に時間が掛かるのと、一般的には若い登録者が多くてマネジメント層や専門職は少ない。

「日本は個人情報が守られているのでハイクラス層も登録しますが、ベトナムではCV(職務経歴書)が流布されることを恐れて、簡単には登録しないものです」

人材紹介会社はこのような見つけにくい人材を短期間で、プロのフィルターを通して探してくれる。ただ、一般的に紹介者の年収の約20%以上という手数料が発生する。 自社社員の紹介はコストがかからず、会社の雰囲気など多くの情報を伝えられるので、相思相愛的な入社が期待できる。ただ、絶対数が限られるのと、退職の際にリスクがあるという。「友人の紹介で入ったのに〇〇だった」などと、変な噂が広がるケースもあるそうだ。

自社サイトなどでの募集もコストはゼロだが、有名・大手企業でないとまず興味を持たれず、積極的な採用方法とは言えない。

面接で聞くべきこと

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出典:JAC Recruitment Vietnam

書類審査を通過すると面接となる。大手企業でなければ、大抵は採用部門の1次面接と、経営層による最終面接が普通だ。1次面接では仕事の経歴、スキル、キャリア、性格などを見て、給与やポジションなどの希望を聞く。2次面接では条件をオファーしてすり合わせ、入社日を決める。経営層との顔合わせという意味もある。

「日本人の面接は『3年後にどうありたいか』など未来を聞きたがりますが、『過去と現在』にピントを当てましょう。日本人はCVの内容を真実と考え、そこにない未来を質問しますが、そうでないこともあります」

どんな人とどのような立場で働いたのか、プロジェクトの規模や期間は何かなどを細かく聞いていくと、リーダーのはずが実際はスタッフだったりと、ポジションへの適合性なども見えてくる。ヒアリングを通して性格も把握できるという。

特に若手を採用する場合は居住地、出身地、家族構成への質問が有効だ。日本では禁止されている項目もあるが、居住地なら勤務時間、出身地なら努力家が多いなどの地域性がつかめる。家族の事情が分かれば勤務時間が想像でき、養う家族が多ければ、給与や待遇などでの交渉に備えられる。

一方、エグゼクティブクラスは、『自分の能力が生かせるなら入社する』というスタンスの人が多く、企業の対応や判断力を観察している人が多いという。

「優秀な人材は相互につながっていて、面接官以上にその会社を知っているケースもあります。面接官と応募者が互いに観察し合っていると思ってください」

有能な人材であれば「積極的に採りにいく」ことも必要になる。応募者が心動かされる一番の相手が現地法人社長のはずだが、社長自らがヘッドハンターの動きをしていないことも問題だと加藤氏。「なぜあなたに来てほしいのか」、「ぜひ一緒にこんな事業をしたい」など、自社の素晴らしさを語れる人が少ないと感じている。

「日系企業は他の外資系より給与が安い。優秀な人材を獲得したいなら社長が動くべきです」

優秀な人材ほどフォローを

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出典:JAC Recruitment Vietnam

面接を通れば内定となるが、総じて日系企業は判断が遅いようだ。面接の採否を伝えるのに外資系企業なら1週間、長くても2週間だが、日系企業は1ヶ月以上が普通だという。

「多くの外資系企業には人事部があり、何事にもデッドラインを設けます。担当者はタスクの達成が義務づけられ、インセンティブがある場合も珍しくありません。慎重なのはわかりますが、スピード感は大切です」

内定を出しても、他の会社から条件の良いオファーがあれば断られるケースも。入社までは小まめに連絡を取って、必要としていることを伝える。

入社から試用期間終了までも同様で、ミッションを作って週に一度は振返りミーティングなどを行う。また、「困っていないか?」などと声を掛け、悩んでいたら相談に乗る。「何かあったらこの人に連絡を」というメンターのような担当者を作り、仮に人間関係で悩んでいたらその部門に連絡してフォローするなどのケースもあるという。

特にマネジメント層はある程度の資産があり、「いい機会があれば転職」という人が圧倒的に多いそうだ。こうした人材はベトナムではまだ数が少なく、進出企業も増えてニーズは増加している。採用はかなり難しくなっており、この傾向はさらに強まるという。