物流系企業がベトナムで新しいサービスを始めている。大型・多機能倉庫の建設、冷凍・冷蔵輸送、周辺国へも触手を伸ばす。TTPやAECを見据えて、この勢いは加速するばかりだ。日系物流各社の真意は、どこにあるのか。

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南部最大級の大型倉庫を竣工
物流系企業の競争は激化へ

今年5月、ドンナイ省ニョンチャック3工業団地に「サイゴン物流センター」を竣工した山九ロジスティクスベトナム。南部では日系企業最大規模となる、2階建ての大型倉庫だ。物流に加えて機工と構内作業が事業の柱となっている。

将来を見越した立地選び


SANKYU LOGISTICS (VIETNAM) CO., LTD.
General Director 山下 抄一氏

山九は通関、トラック、海上、航空などの総合物流に加えて、プラントエンジニアリングとオペレーションサポートの3つが事業の柱となっている。具体的には、前者は重量物輸送や顧客工場内の設備の据付けなどを行う「機工」、後者は顧客工場内倉庫での部材や製品の管理から出荷までの操業支援を行う、「構内作業」が業務となる。

「工場設備の据付け、操業から物流までをトータルサポートをしています。山九は世界展開していますが、特に東南アジアと日本、中国を含む東アジアに特化しており、3事業を万遍なく担当しているのもこれらの地域です」

ベトナムでは機工の山九ベトナムを2004年、物流と構内作業の山九ロジスティクスベトナムを2006年に設立し、2社で3事業を行っている。およその規模では物流が6.5割、機工が3割、1割以下が構内作業であり、物流に関しては個人ではなくB to Bが中心だ。

同社は2008年、北部のハイズオン省タンチュン工業団地に大型倉庫「ハイズン物流センター」を設立した。主に電子部品や自動車部品、輸入された石油化学製品などを保管しており、これをベースにして今年、2棟目となる「サイゴン物流センター」を竣工させた。敷地面積は約3万㎡、2階建ての倉庫面積は約2万㎡で、一般と保税倉庫の他、検品・仕分けなど物流加工用の設備を持つ。荷物はバーコードで管理され、Webによる在庫や出入庫などの状況がリアルタイムで閲覧可能だ。実はニョンチャックという立地に同社の狙いがあった。

サイゴン物流センターの全景

「現地法人の設立が遅かったので、VSIPやアマタといった市内より北側の工業団地には既に他社の倉庫がある。そんな事情もあるのですが、それより将来性を感じてここを選びました」

ニョンチャック3工業団地はカットライ港、カイメップ港、2025年に完成予定のロンタイン空港のほぼ中心に位置し、サイゴン東西ハイウェイの完成で、都市部から新空港へのアクセスもスムーズになるはずだ。また、カットライ港はアジア地域への玄関口だが大型船舶の入港が難しいため、今後は深水港であるカイメップ港が主たる貿易港になるだろうという。つまり、今後はこの地域が国際物流の拠点になると見ているのだ。

人材で優位性を高める

ハイズン物流センター
サイゴン物流センターの倉庫内2階

サイゴン物流センターに保管するのは、工業製品はもちろん、アパレルと家具に力を入れていくという。

東南アジアでは珍しい2階建てにした理由は、土地の有効活用もあるが、これらの製品を埃から守るという目的も大きい。搬送作業などで開けっ放しとなることが多い1階と比べて、完全な倉庫として使える2階は密閉できるからだ。アパレルでは検品・検針、家具では検品も担当する予定で、顧客も決まりつつあるという。

「南部には日系企業のアパレルや家具の工場が多くあります。TPPやAECでベトナムの縫製業は伸びると思いますし、数年先には自動車など工業部品の輸入も増えるのではないでしょうか。そうなれば、複数の企業の製品をセットにして出荷するなども始められると思います」

1990年代に10年ほどタイに赴任した山下氏によれば、ベトナムの市場規模はさほど大きくないという。ただ、中国と東南アジアの間に位置する立地の良さから、TPPやAECが本格化すればその存在感は高まるだろうし、同社でもホーチミン市・プノンペン・バンコクの南部回廊での陸送をこれからサービス化していく予定だ。

カンボジアにはアパレル系の縫製工場が多くあり、プノンペンからホーチミン市までトラックで運び、そこから日本へ出港する案件が増加しつつあるという。

「現在のお客様は日系企業が多いのですが、今後は欧米の化学系企業なども獲得したいですね。日系の物流系企業は仕事が丁寧で納期を守る、というのは既に当然で、日系の同業他社は何十社と進出しています。今後はどこの国でも同じサービスを提供することが、特に欧米系企業で求められると思います。東南アジアに多くの拠点を持つ山九の強みが活かせます」

今後はトラックの自社保有率を高め、国際間輸送では特にカンボジア・ベトナム間のルートを商品化し、事業においては機工の割合を増やしたいという。ただ、価格は当然重視される上に、サービスの内容も質も各社の努力の結果、顕著な差が減りつつある。今後はローカル企業を含めて、物流系企業の競争激化が加速するという。

「ベトナムへの進出や新たな事業展開など、お客様の情報をいち早く入手してアドバンテージを得ることと、社内的には良い人材を育てて優位性を高めることが、今後の物流系企業の差別化につながると思います」