回は、駐在員がベトナム国外へ帰任する年度における個人所得税の取り扱いを解説いたします。特に最初の赴任開始や帰任時期における「年度」判定について、「西暦の暦年」だけで誤認しないよう注意をお願いします。

駐在員の居住者か非居住者かの判定は、ベトナム滞在日数が183日以上などの要件をもとに行います。駐在員の帰任にあたり、帰任年度において居住者の要件を満たさなくとも、帰任直前年度まで居住者の要件を満たしていた場合、帰任年度において居住者認定を受ける可能性があるため、留意が必要となります。

本論点については、ベトナムでの勤務実態が前年度以前と同様ならば、帰任年度においてもベトナム居住者とすべきであるという考え方があります。また、帰任年度のみ非居住者への変更を可能とすると、帰任年度の滞在日数および年度ごとの給与支給額を操作することにより、意図的な租税の回避行為が可能となるため、これを防止することを目的に、非居住者への変更を認めるべきではないという考え方もあります。

他方、滞在2年目からは、居住者か非居住者かの判定は、暦年を通じた滞在日数等によるべきであるという規定(通達111/2013TT-BTC 第6条1項a点)があり、さらに税務署からのオフィシャルレターでは、同様の事例について非居住者とする旨の回答(オフィシャルレター1638/CT-TTHT)もあります。

近年、帰任年度の滞在日数が183日未満の場合、非居住者と認定される事例が増えてきているものの、依然として居住者と認定される可能性を排除することはできません。帰任後の追徴課税を避けるためにも、十分な証憑書類を備えた上で、必要に応じてオフィシャルレターでの確認を行うことが重要です。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
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