人物撮影:大池直人、杉田憲昭
(Mr. Phan Thanh Huyを除く)

CBRE (Vietnam) Co, Ltd.
ベトナム不動産の活況は続く 弾けた「バブル」とは異なる

グローバルに不動産サービスを展開する、最大級のグループ会社CBRE。その中でCBREベトナムは不動産の売買・仲介、マーケティング、調査・鑑定などの多彩なサービスを提供する国内大手企業だ。在越12年のマーク・タウンゼント社長が語る。

ベトナム不動産の現在

Managing Director
Mr. Marc Townsend

 ハノイやホーチミン市では、去年から急に数多くの高層コンドミニアムが発売され、現在も多数の開発プロジェクトが進行中です。学校、病院、複合施設などを含めた都市開発も進み、不動産市場が活況となっています。

 ベトナムでは2006~2007年頃に不動産価格が上昇し、その後にバブルが弾けて、価格が急落しました。このような不動産市場が「再起動」するまでには時間がかかります。

購入者には再度、市場への信頼感を育てないといけませんし、デベロッパーは市場を見直して、購入者のニーズをもう一度分析する必要があります。こうした経過の後に、購入力が改善したと感じたら、デベロッパーは再び開発を始めるのです。

その回復時期はハノイで先に来ました。例えば、Vingroupによる「Times City」や「Royal City」など大規模なプロジェクトでは、全部で3000戸以上のコンドミニアムを発売しました。

その後、ホーチミン市にも同規模の大規模プロジェクトが現れます。Thao Dien InvestmentがTechcombankと提携して始めた、3000戸以上を提供する「Masteri Thao Dien」プロジェクトなどです。Vingroupも昨年の第4四半期から、約1万戸となる「VinHomes Central Park」を着工しました。

販売はとても好評で、Masteri Thao Dienの場合は1年でほとんど完売し、ペントハウスのみが残っていると聞きます。

5年前と比べると販売取引戸数はかなり増加しています。ただ、全体的に今のベトナムの不動産市場は規模が小さく、販売取引戸数を比較するとバンコクやマニラ、クアラルンプールと比べてまだまだ少ない。ベトナムの需要は非常に大きいので、かなりのポテンシャルを持つ市場だと言えます。

南北の開発事情

 ハノイとホーチミン市で何かの違いはあるのでしょうか。

 新都市開発やプロジェクト開発において、様々な面で異なっています。まずホーチミン市では、中心部以外にもトゥーティエム新都市区が開発されていますが、長期間が経っても形にならず、実質的に今からスタートするところです。

一方、ハノイの新都市であるバーディン区、ドンダー区地域は政府に注目されたためか、デベロッパーは巨大な規模の住宅や商業用プロジェクトを建設しました。そのため、ハノイ市場は供給過剰気味で、商業用スペースの家賃もホーチミン市ほど高くありません。

しかし、コンドミニアムに関してはハノイとホーチミン市で共に順調に伸びています。コンドミニアムに次いでは、一軒家とヴィラが注目されます。
次に土地についてですが、ハノイでは土地はまだ広くある一方で、ホーチミン市では中心部の土地価格が上昇し、よい立地の入手はかなり難しくなっています。そのため、建設中の地下鉄線に沿った2区や7区、9区、トゥドゥック区などの近隣地域に広げて開発しています。
全体的に見ると、ハノイもホーチミン市も同じくポジティブな方向で発展していますが、ハノイのほうが少し政府からの優先度が高いように思われます。

販売されたコンドミニアムの戸数

プリント graph_1

出典:CBRE(他の図版も同様)

以前の「バブル」との差

 以前の不動産バブルと今回の好調はどう違うのでしょう?

 前のバブルの時期から、デベロッパー側は様々な教訓を学び、今は一歩一歩確実に歩みを進めていると思います。加えて、銀行側も購入者を支援するために、様々な住宅ローンのプログラムを展開し、住宅ローンの期間を20年に延ばしたり、最大で住宅価格の60~70%の金額を貸し出しています。

コンドミニアム1戸当たりの面積に関しても、デベロッパーは柔軟に対応しており、購入者に様々な選択肢を提供するようになりました。例を挙げれば、以前の平均的な面積は100~150㎡でしたが、現在では当時と同じデベロッパーで同じようなプロジェクトであっても、多くは50~60㎡で開発しています。一般の購入者、特に初めて住宅を買う人に適切な価格となっているのです。

また、以前の教訓から政府側も不動産の動きをしっかり見ており、購入者の実態や販売される戸数をチェックし、銀行やデベロッパーと連携しながら、各機関を支援しています。

不動産購入の目的

 今、不動産はどんな目的で購入されているのでしょうか?

 現在市場で販売取引されている不動産の種類は、コンドミニアムと一軒家やヴィラ、不動産プロジェクト開発用の土地など、土地所有権付きの不動産です。購入者の目的は、大きく3つに分かれます。

ひとつめは居住目的で、購入者の一番多くを占めています。初めての住宅購入者と、よりよい住宅にアップグレードしたい人たちの2グループがあります。

2つめは投資目的です。物件を人に貸して、家賃収入を得ることが目的となります。質の高いコンドミニアムなら賃貸料は高く設定できますし、利益率の良い投資と見られています。

3つめは投機目的です。住宅を転売して、その価格差で利益を出します。

この数年の不動産市場を見て感じるのは、高級コンドミニアムの増加です。2年前なら、中所得者向けのコンドミニアム(価格800USD/㎡以下)で、1戸の面積が平均50~60㎡の販売取引が主流でした。しかし、最近の6~9ヶ月間は、ホーチミン市なら2区や7区の高級コンドミニアムが増えています。

現在の不動産市場がホットになりつつあり、早いスピードで開発が進んでいるため、バブル期の再来の恐れを感じました。そのため、我々は2015年第2四半期に発売された、ホーチミン市の高級コンドミニアムの発売式に数多く参加し、参加者の様子を詳しく観察しました。

そこで、多くの参加者が本当の居住意欲を持っているとわかりました。彼らはきちんと銀行と相談し、各物件の平面図などをよく見て、完成予定日や入居予定日、学校やスーパーマーケットなどの周辺施設、毎月の運営費や管理費などの詳しい情報を尋ねていました。そのほとんどはベトナム人でしたが、外国人も頻繁に見かけました。

このようなことからも、現在の不動産市場は以前よりかなりポジティブであると感じています。

アジア諸国と比べたコンドミニアムの価格

プリント

※主な提示価格による。価格はUSD/㎡

販売されたコンドミニアムのクラス

プリント プリント

外国人にとっての魅力

 今年7月に改正住宅法が施行されて、外国人でも不動産が購入できるようになりました。

 これまで外国人の不動産購入は条件が厳しく、購入者はごく一部に限られていました。ベトナム人と結婚して、ベトナムに長く住む予定の外国人や、ベトナムでのビジネスのため、今後の駐在員用に住宅を用意する人などです。しかし、今回の法律改訂はベトナムの不動産市場に新風を吹かせました。

現在、外国人は不動産に対して、所有権や経営権利が持てるようになっています。

しかし、投資者、特に外国人投資者の視点から見ると、投資を決定するまでには市場全体をはじめ、プロジェクト自体の長期的なポテンシャルなど、様々な要素を慎重に考慮してから決める傾向があります。
とはいえ、日本や韓国などの外資系デベロッパーもベトナムで大規模なプロジェクトを展開していますし、ベトナムの不動産は諸外国から注目を集めています。

 外国人にとっての、今後のベトナム不動産の魅力とは何でしょうか?

 外国人、特に日本、シンガポール、香港、中国、韓国、インドネシアなどのアジア圏の人にとっては、以下の点が挙げられます。アジア諸国の相場と比べて価格がかなり安いこと、市場上の物件が多いために購入者にとっての選択の幅が広いこと、仕上がりの質が他国に負けないことなどです。

例えば、韓国のデベロッパーが建設する物件なら、エレベーターやエアコンなどの設備や素材は、韓国製のものを使うことが多いです。また、特に高層コンドミニアムでは物件管理やメンテナンスがかなり重視され、セキュリティガードの設置や共有スペースのクリーニング、エレベーター管理などの業務がしっかり行われています。

このように条件が良いのに、先進国と比べると利益率が高い。住宅を貸す場合には借り主を探すのが容易で、借り手の予算にも余裕がある。転売での利益もよい。メリットは大きいと思います。

法律の施行はまだ始まったばかりなので何とも言えませんが、7月から外国人専用の発売式などがいくつか開催され、良い反応だったようです。地下鉄や高速道路などのインフラも整いつつありますから、ベトナム不動産市場は期待できると思います。

プロジェクト別のコンドミニアムの価格

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※主な提示価格による。価格はUSD/㎡

今後の注意点とは?

 ベトナムの不動産の注意点を教えてください。

 マクロ経済の成長などで、ベトナムの不動産市場は復旧できました。ただ、どこの国でも一緒ですが、市場が過熱や凍結を繰り返すのは避けられないと思います。その中でベトナムの市場の特徴は変動が多いこと。かなり敏感で、様々な要素に影響されやすい傾向があります。

だからこそ投資者にとっては面白い市場と言えるのですが、しっかり管理されなければ、そして油断をしたら、深刻な問題を引き起こす可能性があります。現段階で実感できるのは供給過剰の恐れですね。
とはいえ、ベトナム不動産市場の好調は続くでしょう。このまま慎重に管理されるならば、将来性は明るいと思います。

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