Urban Station Coffee
ベトナムで急伸する若者たちの新カフェチェーン

 

国内系では「HIGHLANDS COFFEE」や「TRUNG NGUYEN COFFEE」、外資系では「The Coffee Bean & Tea Leaf」や「Starbucks Coffee」と、激戦が続くベトナムのコーヒーチェーン店。若者たちの「Urban Station Coffee」が後を追う。

 

「ミルクティー」の次は何が来る?

人気商品のSODA DEEP BLUE、HARMONY MANGO、COOKIE ICE CAFE(左から)

ホーチミン市を中心に全国に36店舗を展開するUrban Station Coffee。

来客数は店舗全体で1日に約1万人。洒落たデザインの店内には、カラフルなドリンクを手にした若者が集まる。この店を起業したのが、現在26歳のNhat Nam氏だ。大学時代の2011年に、仲間6人と資金を出し合った。

「もともと趣味がビジネスで、大学の時はiPhoneの販売やイベントの主催をしていました。資金が多少貯まったので、好きなカフェで起業しようと思いました。ただ、ホーチミン市内の土地は高いし、競争も激しい。郊外で開店しようと皆で決めました」

ブランド化やチェーン展開を考えても、ドリンク市場は有望と思ったそうだ。ベトナムでは2000年前後からミルクティーが流行り始め、カフェから路上店まで多くの店が出たが、その後は大手チェーン店も生まれて、淘汰が始まった。その後もブームは続くが、2010~2011年の当時は「飽和状態」。彼は今後の2つの方向を推察した。

1つは味、サービス、見た目などにこだわった、ミルクティーの高級ブランド化。これは既に始まっていた。もう一つは新しいタイプの商品が流行る。彼は後者を考えて、「美味しいドリンクを低価格で」という路線を打ち出した。

「レシピを考えて、家賃や人件費を抑えたら、手頃な料金で提供できると思いました。ただ、当初は資金不足から、郊外にある大学や高校の近くに出店したのです。その後は中心部のオフィスビル近くなどに変えました」

ターゲット層は16~30歳以下の若い世代で、ヨーロッパ系のライフスタイルを好み、新しい商品に興味を持ってくれる人たち。1回の来店での客単価は3万ドン程度を見込む。これはおよそ同店のドリンク1杯の値段で、週4回来店してほしいという。1杯約10万ドンというチェーン店も珍しくないから、この価格帯は結構安い。

 

成長のカギは市場調査

Marketing Manager & Co – Founder
Mr. Dinh Nhat Nam

Urban Stationという名前は、小さくて色々なところにあるヨーロッパの「駅」のイメージから。最初のビジネスモデルはテイクアウトだったため、忙しくて小回りの利く駅ともかぶらせた。そのため、店舗の入口のドアはイギリスの公衆電話を模して、内装はロンドンの駅の雰囲気にしている。

「ただ、最初の6ヶ月は毎月約3000万VNDの赤字が出ました。続けるかどうか仲間と相談して、市場調査をしたのです」

その結果、ベトナム人のカフェ習慣は店内でゆっくり過ごすタイプとわかった。車ではなくバイクに乗る人が圧倒的に多いため、テイクアウトは不向きとも考え直す。そこでビジネスモデルを店内型に変えた。

最初の店舗はコーヒーを作って提供するカウンターを店の前に出し、早く帰ってもらうためにわざと高い椅子を置いていた。それを、カウンターは店の前のまま、座りやすい椅子に変えた。すると、テイクアウトは半分になり、利益が出たという。

再び市場調査をすると、ベトナム人はカフェの空間を楽しみながら、家族や友人とおしゃべりをしたいとわかってきた。そのため現在は、カウンターを内側に入れて、椅子をたくさん置いたレイアウトになっている。

「新しいことを始める場合は必ず市場調査をします。各店舗の店長にアンケートを渡し、お客さんに聞いてもらって、まとめて本社に戻してもらいます。新商品では試作品をまず提供して、市場調査をし、うまくいったら商品化しています」

ベトナムではフランチャイズ展開は一般的だが、Urban Stationでは直営店が約1/3で残りがフランチャイズ店。多店舗展開にはフランチャイズが一番早く、資金も少なくて済むが、ブランドを他人に託すのはリスクがあるとNhat Nam氏は考えている。そこで同社では、品質管理、店の運営、マーケティング、スタッフの採用までを本社が行っているという。

 

外資は歓迎 レベルアップにもなる

ホーチミン市のHoa Su通り店

外資系企業の独資参入をNhat Nam氏は好意的にとらえている。例えば、2013年に進出したStarbucks Coffee。この世界大手の力を借りて同社は成長できたと語る。新スタイルのカフェがやってきて、新しいものを拒否せずに受け入れるベトナム人が増えた。その変化がUrban Stationにも作用したというのだ。

「外資系の参入は歓迎します。私たちも海外の技術や知識を学べて、市場がレベルアップするからです。ベトナムの飲食業は競争が激しくなり、チャレンジングな市場になると思いますよ」

同店には、カンボジアやタイなどから海外展開の誘いがあるそうだ。その準備のため、昨年は新たなチェーン展開を控えて、サービスや採用のプロセスを考え直してきたという。
こうした若者が今、ベトナムでは増えつつある。