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企画・開発・生産から広告・販促まで ベトナムに根を張るオリジナル製品

 

目薬、リップケア、ニキビケア、男性洗顔料、日焼け止めなど各カテゴリーで、
ベトナム国内のシェア1位を獲得しているというロート・メンソレータム・ベトナム。
戦略のカギは、オリジナル商品の開発とテレビCM の成功だった。

ベトナムはメイン市場でアジアの輸出拠点

Main IMG_0985_02ROHTO-MENTHOLATUM (VIETNAM) CO., LTD.
ロート・メンソレータム・ベトナム 白松浩文Deputy General Director

「ベトナムの女性はくるぶしの少し上、脛の内側に赤い痣のある人が多いんですね。なぜかと考えたら、バイクの後部シートに乗っている時に、足がマフラーに接触した火傷痕のようなのです。何とか治せないかと思いました」

白松氏のこの発案から生まれたのが「ScarZ」(スカーゼット)。昨年発売された、傷痕や火傷痕を目立たなくする製品だ。ロート・メンソレータム・ベトナムは、毎年100アイテム近い新製品や改良品を発売しているが、こうした「ベトナムオリジナル」の製品も少なくない。

他にも、8割近いティーンが悩んでいるというニキビに対応した「Acnes」(アクネス)ブランドでは、全21種類のうちベトナム独自の製品は14種類。男性向けスキンケア「OXY」(オキシー)ブランドは、全17種類中7種類がオリジナルだ。

多くのメーカーでは、新製品は日本で開発して、海外では生産と販売を行う日本発想の「現地化」が行われている。同社のように、企画、開発、生産から、マーケティング、広告、販促までを実施しているケースは稀だろう。その背景には、ベトナムこそが主たる市場であり、かつアジア輸出の拠点でもあるという位置付けがある。

「ベトナムで強いブランドを作り上げて、東南アジアや南アジアに展開したいのです。成長著しい新興国市場を取り込むことを考えると、日本やアメリカは特殊な市場でむしろ例外。ベトナム消費者の支持を得た製品だからこそ、アジア各国への輸出ができると考えています」
ベトナムで生産される製品は8割が国内向け、2割が日本や東南アジア向けだという。

 

ベトナム女性の美意識向上にも貢献

 

Scarz_SG
白松氏の着想から生まれた「ScarZ」AcnesC10_SPG_FN ベトナムオリジナルのニキビ痕ケア「Acnes C10」

ロート製薬は1997年、医薬品や化粧品の製造・販売のための子会社をベトナムに設立。1999年にビンズオン省のVSIP(ベトナム・シンガポール工業団地)で生産工場を稼働させた。進出の理由はある程度の人口規模で、特に若い層が多いこと。また、インフラが整っておらず、バイクを使う人が多いため、目に埃や異物が入ることでの目薬の需要が期待できたからだ。

現在の代表取締役会長兼CEOの山田邦雄氏が受けた、ベトナムの印象も大きな理由になっている。白いアオザイを着た女子高校生が颯爽と自転車で走っている姿を見て、山田氏は「美しく背筋をピンと伸ばしている。こうした国民ならこの国は成長するはず」と確信したという。

一方の白松氏は、2007年5月にDeputy General Director として来越し、今年で8年目となった。

「赴任時と現在を比べると、女性がお洒落になりましたね。弊社のオフィスは9割以上が女性社員ですからよくわかりますが、当時はスキンケアや化粧をほとんどせず、服装はTシャツとサンダルがほとんどでした(笑)」

ベトナム経済の成長や環境の変化などから、女性たちは肌を意識し、化粧を始め、服装に気を遣うようになったのだろう。それを変えてきた一つが同社の製品であり、同社の11年連続の増収が、そうした変化の拡大を証明している。

 

若者に訴求するCM戦略

 

Sheer Color SPG_13.09.20  chưa FA
ティーンモデルの「バオ・チャン/ Bao Tran」を使った色付きリップ「Sheer Color」(シアーカラー)の広告?????????????????????????????? 女優・歌手のミン・ハン(Minh Hang)を使った日焼け止め「Sunplay」(サンプレイ)の広告

同社のターゲットは主に若い世代。そのため、テレビ番組の協賛にもなっており、若者向け番組のスタジオの背後に、「ROHTO」の看板を見た人も多いだろう。また、若者に人気のシンガー、俳優、タレントを登場させたテレビCMを数多く打っている。

CMでの広告戦略も「ロート流」だ。競合他社ではタイでのCMをベトナム語に変えたものが多い中、同社はベトナム人タレントを起用した独自コンテンツを制作している。

「ベトナム消費者のための製品を、ベトナム人タレントを通じて知ってほしいという想いからです。出来る限り出演者はベトナム人にこだわりたいですね」
CMの波及効果も生まれている。女性歌手によるCMソングをフルソング化してNO・1ヒットになったり、男性タレントがCM放映と同時にテレビ番組で一躍有名になったりで、製品の売上が伸びたのだ。テレビCMは毎年10本程度制作しており、加えてスーパーや小売店への営業を効果的に行っている。

白松氏が赴任してから現在まで、社員数は2倍、売上は3倍になったという。こうした国内外の需要増に応えて、今年5月にはVSIPに第2工場棟が竣工した。化粧品の生産能力は2倍、目薬包装能力は1.5倍になるという。

「工場にはまだ余裕があるので、今後の製造能力拡張も可能です。商品のアイデアはまだまだありますから、ベトナムのオリジナルブランドももっとたくさん作りたいですね」