越の国の法律相談 No.012

14年ぶりに新しい競争法が施行開始へ

ベトナム競争法(日本の独占禁止法に相当)は、市場経済導入が本格化しWTO加盟を控えていた2004年に制定され、2005年から商工省の外局であるベトナム競争庁(VCA)によって運用されてきました。

この間、自動車損保会社19社の価格協定や、航空燃料会社の独占的地位の濫用などの著名事件もありましたが、VCAが摘発してきたのは、ほとんどが不公正取引事案(比較広告、不当表示など)で、カルテル・価格維持など本来の反競争事案は年1~2件程度にとどまっています。このような状況の中で、昨年、競争法が全面改正され、新競争法が2019年7月から施行されます。

新法の施行細則を定める政令案も公表

新法で注目される点は、現行法では、禁止・制限される反競争行為を、関連市場占有率何%以上、など画一的な基準で規定しているのに対し、より多面的な市場の実情に基づく基準を設定し、当局が総合的に判断するという原則を採用したことです。

そのため新法下では、日本の公正取引委員会が公表しているような詳細な運用ガイドラインが不可欠となり、VCAの今後の取り組みが期待されます。

このほか、現行法では、比較広告が不公正競争行為に該当するとされていますが、新法ではこの規定は削除され、虚偽や誤認を招く情報提供行為が規制対象となりました。

また、新法の施行細則を定める政令案も公表されています。企業集中の事前届出について、現在は参加企業の合計関連市場占有率が30%以上50%以下の場合に必要ですが、このほかにも、新政令案ではベトナムにおける総資産1兆VND以上または年間収入1兆VND以上の企業が参加していれば、事前届出が必要とされているので、注意が必要です。

 

小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援
長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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