EY大手会計事務所のベトナム事情 No.010

ロイヤリティ等に対する指摘が増加

EYベトナムの小野瀬です。第10回の対談は、日系企業担当の浅野智道マネジャーです。

小野瀬 最近、税務調査の件数が増加傾向にあるように感じます。また、その中でも特に移転価格については追徴額が高額になる事例があるようです。どのような点に留意すべきでしょうか。

浅野 移転価格の税務調査においては、関連者との商品・製品の売買取引だけでなく、ロイヤリティ等の取り扱いにも留意する必要があります。ロイヤリティ等を具体的に分類すると主に、①ロイヤリティ(ノウハウ、ライセンス)、②トレードマーク(商標使用料)、③セールスサポート(営業支援)、④マネジメントサービス(経営指導)、⑤テクニカルサポート(技術支援)の5つが挙げられます。

このうち①について、実際に技術移転に該当する場合は、技術移転法に基づき科学技術省に登録する必要があります。また、①および②は、移転価格税制上ベンチマーキング(同業他社比較)が求められるケースが多い点も留意すべきポイントです。③、④及び⑤は、ベンチマーキングは任意ですが、これらのサービスやサポートを実際に行ったかという事実と、その金額を証明する資料が求められます。

資料で説明できないと否認される可能性も

小野瀬 政令には、税務調査は実質優先で実施されることになっていますよね。

浅野 はい、政令(Decree20/2017/ND-CP)には税務調査は実質優先の原則(Substance-over-form principles)であることが明記されています。

しかし、実際には形式的な指摘も少なくありません。資料で説明できない場合は、実質的にはサポートを受けているケースにおいても否認される可能性があります。従って、移転価格の税務調査準備に際しては、実質面・形式面の両面から確認する必要があります。

小野瀬 実質的な対応が重要なことは言うまでもないですが、形式面での脅威を抑制できるように準備した方が良いですね。

小野瀬 貴久
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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