駐在員が陥りがちな自尊心の低下

山崎豊子氏の小説『沈まぬ太陽』を久しぶりに読みました。主人公の恩地氏は、駐在員の条件を「孤独に耐えられる人」と定義する場面があります。

心理学の大家ウィルシュッツ博士に、セルフエスティームについて教えて貰いました。セルフエスティームとは、ポジティブな自己イメージであり、自分自身を誇りに思い、他者からも充分に認められているという実感のことです。

人間は、◇自己重要感:自分はかけがえのない重要な存在であるという実感、◇自己有能感:自分は様々な状況に対処できるという自信、◇自己好感:自分のことを総合的に好きであるという気持ちという、3つの重大な感情を持ち、それが満たされているとセルフエスティームが高いと言えます。

自分に合った方法で自己肯定感をアップ

駐在中、「自分はこの職場に必要なのか?」(自己重要感の低下)、「ベトナム語も、英語もわからない…」(自己有能感の低下)、「何もできない自分が嫌いになる」(自己好感の低下)など、セルフエスティームがどんどん低下してしまうことがあります。

自信が持てないときに、その気持ちを認めることは、容易ではありません。そのようなときに、「自分の業績や成果を自慢する」または、「ベトナム人に対して傲慢な態度をとる」など、気持ちとは裏腹の行動をとってしまうことがあります。そういった行動は、周囲の人との関係を悪化させ、職場の生産性を著しく低下させる要因にもなります。

人間誰しも、セルフエスティームには高低の振り幅があります。大事なことは、各自、自分に合ったセルフエスティームの向上策を打つことです。

私は、博士から教わった「あなたの成長を助け、自然体の自分・最高の自分になれるよう助けてくれる人たちと交流する。エネルギーや優しさに満ち、成熟した人々のコミュニティをつくる」という方法が好きです。人に感謝!

 

荒澤 文寛 Arasawa Fumihiro
株式会社ビジネスコンサルタント入社後、各国の責任者を経て、
ベトナム法人を立ち上げ。現ジェネラルダイレクター。
Business Consultants Vietnam Co., Ltd.
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