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さんは散歩中、手に持っていたカバンを、後ろからバイクで近づいてきた犯人に奪われてしまいました。バイクによる犯行が多いので、カバンを車道と反対側の手に持つ、可能であればカバン自体を持ち歩かないなど、細心の注意を払い、ひったくりを未然に防ぐに越したことはありませんが、実際に被害に遭ってしまったら、どう対処したらいいでしょうか。

ひったくり犯には財産奪取罪等の罪が成立し得ますが、まずは生命と身体の安全を確保するため、過剰な抵抗や身体拘束は控え、大声で「クォップ!(Cướp、泥棒)」と叫び、周りの助けを求めましょう。犯人の姿態やバイクのナンバーを覚えておくと、犯人探しに少しは役立つかもしれません。

被害に遭った場所を管轄する警察署に、できるだけベトナム人同行のもと、被害届を提出しに行き、被害証明書を取得(後日、保険会社に提出を求められることが多いと思われます)するとともに、犯人の捜査も依頼してください。また、大使館や領事館への届出も忘れずに。その他、カードや携帯電話もひったくられた場合は、被害拡大を防ぐため、速やかに利用停止の手続きを行ってください。

犯人が捕まって刑事裁判になった際には、被害者として犯人に対して損害賠償を請求する権利がありますが、犯人が進んで賠償するとは考えにくく、裁判に参加する時間やコストを考えると、残念ながらほとんどのケースで「費用倒れ」になると思われます。また、実際には、犯人が捕まってひったくられた物が返ってくることは、ほぼ期待できないと言ってよいでしょう。

ベトナムでの生活に慣れて、油断した頃に被害に遭われることも多いようです。今一度、用心する機会になればと思います。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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