ナム労働法では、いわゆる「解雇」には、① 使用者の一方的な雇用契約の解除、② 整理解雇、③ 懲戒解雇、の3通りがあります。

① 一方的契約解除は、労働者が頻繁に労働契約に定める業務を遂行しない場合、病気・事故で連続12ヶ月(無期限契約)・6ヶ月(有期限契約)以上労働能力を回復しない場合、天災等の不可抗力による生産規模縮小、などの場合に認められ、使用者から労働者に対する事前の通知(無期限契約の場合45日、有期限契約の場合30日)が必要です。

② 整理解雇は、経済的理由または組織・技術の変更に伴う解雇で、まず雇用者は労働者使用計画を作成・履行して雇用継続に最大限努力する義務があり、それでもなお解雇が必要な場合、労働組合代表と協議し、省レベルの労働当局に30日前に通告し、労働者に失業手当を支払えば、解雇が可能となります。

③ 懲戒解雇は、労働法と各企業の登録済み就業規則に明記された場合のみ認められます。例えば、窃盗、汚職、賭博、故意による傷害、職場内での麻薬使用、経営または技術の秘密漏えい、知的財産の侵害行為により雇用者に重大な損害を与える場合、降格処分を受けながら再度違反行為を行う場合、月に5日または年に20日無断欠勤した場合などです。また、労働組合代表が出席する会議を開くなどといった厳重な手続きが必要です。

なお、女性労働者保護のため、結婚・妊娠・産休・12ヶ月未満の子どもの育児を理由として懲戒解雇や一方的契約解除を行うことができず、また、産休中の女性労働者または12ヶ月未満の子どもを養育している父母である労働者に対しては、どのような理由によっても懲戒解雇処分ができません。

小幡 葉子
Obata Yoko
TMI総合法律事務所ハノイオフィス勤務。日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。1992年より雨宮眞也法律事務所にて企業法務を担当、JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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